リウマチ 生物学的製剤とMTXを使いこなす。
週末土曜日は、
名古屋のリウマチエキスパートが集まる
小人数のコアな勉強会
BIOLOGIC USER’S FORUM
に出席してきました。
少人数ならではのぶっちゃけトーク満載で、
リウマチ治療の本音を語ってきました。
講演では、
慶応義塾大学の膠原病内科
金子祐子先生のお話を聴講。
内容をメモしておきます。
DTRA: Difficult to treat RAをどう攻略するか。
① 薬物の容量をしっかり使うこと。
ATRACT study & RISING studyレミケード
② かなり早い時期から増量していくこと。初めにガツンと叩いて寛解導入することが大切。
シンポニー50㎎→100㎎に増量した12名中、2回目から増量している人が12名中6名。
③ MTXをちゃんと使うこと。
TNF阻害薬単体はMTXと同等の成績に留まる。
MTXを使っていないと二次無効が増える。
MTXを併用すると抗薬物抗体も出づらくなる。
抗生物学的製剤抗体
Fc部分に対する抗体:非中和抗体 TNFをくっつけることはできる。薬効は下がることもあるため、十分な薬物容量を使用することが必要。
Fab部分に対する抗体:中和抗体 TNFをくっつけることができなくなるため、薬効が落ちる。血中濃度も下がる。
AAA(抗アダリムマブ抗体)の76%は投与後1か月で発現している。そのため、初期に十分な容量を使って血中濃度を上昇させることが必要。免疫複合体が作られたとしても効果が得られるだけの容量を使うことが大切。
シンポニーは免疫原性が低いため、抗生物学的交代ができづらい。
葉酸とMTXの化学式は非常によく似ている。
活性型MTXであるMTX-PG濃度は外国人に比べて日本人では非常に高い。
日本人では少量のMTXで寛解に達しやすい。
肥満や体重によってもMTX-PG濃度は変わる。太っていると上がりにくい。
腎機能が下がるとMTX-PGは上がる。
2019.06.23 | コメント(0)
SAKURAの会 第8回 関西関節エコーEXPERT SUMMIT
今日は外来終了後、大阪へ。
SAKURAの会 第8回 関西関節エコーEXPERT SUMMITです。
関西のエコーエキスパートばかりが集まる、
とても面白い会です。
この会で症例提示をするのもこれで3回目。
今回僕が提示した症例は。。。
60代女性 抗CCP抗体 強陽性の再発性右アキレス腱炎、左膝蓋腱炎の一例
アキレス腱部の軽度浮腫と肥厚。
超音波では付着部よりも、アキレス腱、膝蓋腱の腱全幅にわたる著明なドップラー陽性像。皮下の浮腫像(+)
四肢関節の疼痛、腫脹、圧痛なし。
腰痛なし。
皮疹なし。
下痢・血便なし。
腰椎・胸椎所見なし。
アキレス腱は軽度浮腫上に肥厚しており、単なるメカニカルストレスによるアキレス腱炎とも違いそうな印象。
リンデロンを腱内に局所注入著効するも短期間に再発。
抗CCP抗体120 RF5 MMP-3 48 ANA 40未満 CRP 0.27 ESR 36
RF、AS、PsA、OVERLAPなど鑑別に挙げつつ、局所注射も完全寛解に至らないため、MTX8㎎開始したところ、2週後速やかにアキレス腱部と膝の痛み消失。
フロアディスカッション
滑膜のない、腱から初発するRAも報告されている。
抗核抗体陰性であればほぼSLEは除外される。
抗核抗体陰性でも、抗ARS抗体、抗SS-A抗体は陽性のことがある。
四肢の浮腫がある場合には悪性腫瘍のスクリーニングは必要。婦人科系も含む。
腱の中にアコースティックシャドーを含めた石灰化もあり、痛風や偽痛風の可能性は。
やはり開業して一人でやっていると、よくあるパターンにはまらないときに
悩ましい症例に出会うことがあります。
大変ではありますが、こういうエキスパートの会で自分の症例と考えを提示して
様々な意見や最近のエビデンスについての知見を得ることはとても大切です。
され、その他の勉強としては、以下のようなものでした。
今回もとても楽しい会で、ためになりました。
膠原病膝 京都府立医科大学 免疫内科学 和田誠先生
関節初発のベーチェット病も18%あり。RAとして治療されている場合も。
線維筋痛症 関節超音波では付着部の炎症認めない。 ほかの膠原病とのOVERLAPも稀ではない。
SLE 44/65例に付着部炎
関節超音波による膠原病膝についての詳細な検討は多くはない。
PMRでも膝周囲の滑膜炎がみられることがあり、RAとの鑑別困難なことも。
OA膝 奈良県立医科大学 リウマチセンター 原良太先生
MRIで骨髄浮腫は軟骨損傷の予測因子となる。
早期の形態変化はレントゲンよりも超音波が検出しやすい。
半月板には環状靱帯がついている。
骨棘ができると半月板は外に逃げてしまうため、半月板の逸脱が起こり、半月板のクッション性は失われてしまう。
内外反ストレス、立位荷重ストレスでの超音波エコーを。
OAは単にすり減るだけではなく、多因子の病態。
low gradeな炎症は全身に影響する。
OAでも骨棘周囲にドップラー陽性の炎症像がみられることがあり、術中所見では滑膜が発赤している。
OAの炎症性サイトカインの中心と考えられているTNFだが、抗TND製剤をOAに使用しても効果がない。
OAはヘテロな疾患。炎症の強いものもあれば、軟骨損傷の強いものもある。
結晶誘発性膝関節炎 大阪市立大学 整形外科 岡野匡志先生
膝の大腿骨のdouble contour sign 感度42% 特異度100%
軟骨にプローブを垂直に当てると軟骨が良く見える。
時に輝度が高く映ることがあり、double contourの偽陽性も。
水腫のある関節では軟骨表面が白く見えやすい。プローブで圧迫するか、関節を屈曲伸展させながら水腫の影響を除くことで軟骨表面が白くなくなれば、DCではない。
腱の中の結晶沈着も結構ある。あえてアニソトロピーを利かしてスキャンすることで、石灰化かどうか判別することができる。
GOUTに関しては、エコーよりもDual Energy CTが有用との報告も。
CPPDは軟骨に石灰が沈着してくる病態。
痛風は関節内に尿酸ナトリウムが析出しており、軟骨表面や半月板表面に結晶沈着する病態。
偽痛風性の関節炎は関節破壊が強くなる。
塩基性リン酸カルシウム結晶BCPを組織学的に証明することはできない。ミルウォーキーショルダーが高齢女性に起こることがあり、肩関節が高度に破壊されることがある。
腱や結合組織にも沈着することがある。
レントゲンで結晶がみられることがある。
膝周囲腱付着部 北播磨総合医療センター リウマチ膠原病内科 三崎健太先生
腱には直角にエコービームを当てて描出することが重要だが、付着部はアニソトロピーで黒く抜ける。そのため、関節を30度程度屈曲して腱付着部がまっすぐに伸びるようにすると描出しやすい。
腱付着部というのは骨から約2㎜の範囲を指す。
骨棘やerosion、石灰化がみられることも。
大腿四頭筋腱には4つのレイヤーがある。大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広筋
表層から、大腿直筋腱、内側外側広筋が2,3層目、中間広筋が4層目
膝蓋腱 90度屈曲位で超音波観察するときれいに見える。
鵞足の描出 内側側副靱帯の遠位に下内側膝動脈を認め、その遠位部に鵞足を描出する。下内側膝動脈を鵞足の炎症と間違えないように。
MCLの遠位部に縫工筋腱が乗ってくる。そのやや遠位に、表層から、縫工筋腱、薄筋腱、半腱様筋腱が描出される。
2019.06.02 | コメント(0)
リウマチ患者さんからのよくある質問
当院に通院中のリウマチ患者さんからのお問合せで
よくあるものをまとめました。
ご参考になさってください。
Q. MTX(リウマトレックス、メトレート)を飲み忘れたらどうしたらよいですか?
A. 1日遅れで内服すれば大丈夫です。
翌週からは、いつも通りの曜日に内服してください。
もし数日間も忘れたのであれば、その週は内服をせず、
翌週からいつも通りに内服してください。
Q. MTXを服用後、気持ち悪くなった場合はどうすればよいですか?
A. MTXを飲める量には個人差があるため、
増量後に気持ち悪くなった場合にはご来院の上、
その旨を医師に伝えてください。
MTXをもとの量に戻すか、減量しながら、
他のお薬の併用などを考えてまいります。
Q. 風邪・発熱・口内炎・帯状疱疹などの症状がある際は、薬を飲んでいいですか?
A. 軽い風邪程度であれば通常通り内服してください。
発熱や咳・痰、痰のない空咳などの症状がある際は、
肺炎などの可能性もあるため、内服を中止して速やかに受診してください。
口内炎はMTXの量が多い時や、疲れているときに出現します。
日頃から疲れをためず、はやめに休息をとり、
十分な睡眠と手洗い、うがいをこころがけましょう。
Q. 自己注射を忘れた場合はどうしたらよいですか?
A. 翌日投与すれば大丈夫です。
週1回投与製剤の場合には、もし数日間遅れてしまった場合には、
翌週のいつもの曜日に投与してください。
Q. 自己注射部位が赤く腫れた場合はどうしたらよいですか?
A. 注射によるアレルギー反応の可能性があります。
赤く腫れた部位を写真で撮影したうえで、受診してください。
注射針が毛細血管にたまたま当たってしまうこともあり、
その場合には小さな出血斑(紫斑)ができることがありますが、
その場合にはいつもよりしっかり圧迫止血をしていただければ大丈夫です。
Q.旅行に行く際に注射する日が重なります。注射の日を変更してよいですか?
A.週1回製剤の場合、1日程度であれば早めたり遅らせても構いません。
もし数日間ずらすようであれば、その週は投与を見合わせ、翌週から投与しましょう。
2週間に1回、4週間に1回などの投与の場合は、数日間ずらしても構いません。
Q.お薬を服用後、皮膚のかゆみや発赤が出ました。どうしたらよいですか?
A.内服によるアレルギー反応の可能性があります。
特にアザルフィジンでは、飲み始めに発熱とともにみられることがあります。
その他、たまたま季節のアレルギーや食物アレルギーが重なる場合もありますので、
症状が出た部位の写真を撮って、受診するようにしてください。
2018.12.26 | コメント(0)