院長ブログ

日本リウマチ学会2017

水曜日から4泊5日。
今年も患者さんに最新のリウマチ診療をお届けするために、博多で開催された日本リウマチ学会に参加してきました。

今年は当院のリウマチケアナースの小島さんも一緒に参加してくれたので、僕が普段行っている診療内容をより深く理解してもらうことができたかと思います。
おかげで、今後の当院のリウマチ診療をよりよくするためのアイデア会議もできました。

まずは、リウマチと診断された患者様にお渡しする資料をリニューアルすることから始めていきます。

さて、今回の日本リウマチ学会は、新薬開発やバイオ!バイオ!という生物学的製剤のぶつかり稽古の様相も一通り落ち着き、リウマチの妊娠・出産の最新情報。関節超音波を含めた画像評価。リウマチの痛み。MTXによる副作用、特にMTX関連リンパ増殖性疾患について。強直性脊椎炎や乾癬性関節炎を含めた脊椎関節炎の診断と治療。など、生物学的製剤は一通り使いこなした先生がぶつかる悩みについて検討した内容が多くみられました。
中でも、各種生物学的製剤による寛解の報告は会場からあふれる盛況ぶりを呈していました。

超音波でリウマチ診療を行う専門医としてほとんどの超音波セッションは聴講してきました。
今回の超音波セッションの流れとしては
最近パブリッシュされた2論文、TaSERstudyとARCTICtrialで示された、丁寧に関節の触診を行えば関節超音波と同じ治療成績が出せる、というものに対しての超音波エキスパートからの反論が出されていました。

リウマチ超音波は、触診で明らかに腫れまくっている、大火事が起こっている患者さんに対して必要なものではなく、腫れているかどうかわかりづらい、1関節や2関節程度の症状しかない患者さんの超早期診断や、ほとんど寛解に近い状態における、触診では見逃してしまうような残存滑膜炎の検出に役立つものです。
また、TaSERstudyでは足の超音波検査は行っておらず、患者さんの自覚症状も出づらく、医師の触診感度も下がる足趾の超音波を行わないのであれば話になりません。
我々リウマチ専門医は、患者さんのただ一つの関節も壊さないために、寛解をゴールとしてリウマチ診療を行っているのですから。
北海道内科リウマチ科病院からは、手関節、手指MP,PIP関節を検討した結果、熟練したリウマチ医が診察して腫れていないと判断した関節でも、超音波では高率に滑膜炎が残存しており、またその逆もわずかにみられており、熟練したリウマチ医といえども、自分の触診所見だけを過信せずに、治療の節目には関節超音波を行うことが推奨されていました。

痛みのセッションでは、薬物療法のほか、痛みの悪循環を説明するFEAR AVOIDANCE MODEL、鬱傾向やpain-DETECTなどを用いた疼痛評価も紹介されており、慢性疼痛の考え方がリウマチ診療に応用できると紹介されていましたが、関節が壊れたら手術、ということまでで、一番大切な軟部組織に介入して関節可動域を改善するリハビリテーションや、筋膜性疼痛MPSなどについては全く触れられていませんでした。
また、腰痛を考えるシンポジウムがリウマチ学会で行われていたことも面白いところです。椎間板性腰痛、椎間関節性腰痛、筋膜性疼痛、神経障害性疼痛などにつき、それぞれのパネリストの先生がご発表なさっていましたが、筋膜性疼痛MPSについてはトリガーポイントや関連痛などのキーワードが発表されてはいましたが会場へのインパクトは弱く、病理学的にもまだまだ論文数が少ないとの発表でした。
当院で行っているリウマチ患者さんへのリハビリや筋膜性疼痛治療はもっとアピールしていかなくてはならないかと思いました。

MTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)とは、MTXを内服しているときに起こることのあるリンパ節の腫脹や難治性の口内炎、歯茎の腫脹などですが、MTXを中止すると消退するものをいいます。
ただし、難しいのはそれが発症段階でMTX-LPDなのか、本当のリンパ腫なのかを見分けることができない点です。
もともとリウマチの患者さんにはリンパ腫が多くみられることも言われており、まずはリンパ節が腫れてきたり、歯茎が腫れてきたりした場合には、速やかに主治医に報告するように患者教育を行い、その時には速やかにMTXを中止することが必要です。
2週間は経過を見て、消退するならばMTX-LPDということができますが、消退しなければ血液内科など専門科に受診し病変の生検が必要になります。病状が悪い場合には、2週間の経過を待たずに紹介することが必要です。
パネリストの一人であった針谷先生に質問させていただいたところ、リンパ腫自体がリウマチによるものか、MTXによって発症したものかは証明できるものではないが、MTXがリンパ腫の増大に関与していることは考えられるとのことでした。
ちなみに、MTXの1回の内服量や総投与量の関係はまだ明らかになっていないそうなので、現時点でリウマチ治療に一番大切な薬であるMTXの使用を過度に恐れではいけないでしょう。それよりも、最初はしっかりとMTXを内服して、リウマチの活動性を早く、強く消火して、寛解した後にMTXの投与量をできるだけ減らしていくことが良いのではないでしょうか。

強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などの脊椎関節炎については、皮膚科で乾癬を見つけたあと、皮膚科の先生では関節炎が見逃されがちであることはわかっていても、実際に皮膚科の医師と関節を見るリウマチ医が連携することの難しさや、皮膚科医でも3時間の練習で関節所見が取れるようになることが紹介されていました。
また、リウマチは関節の中で滑膜が異常増殖して炎症を起こすことで軟骨やbear areaの骨を溶かしてしまう一方、脊椎関節炎の病態の首座は付着部であるため、超音波で見た時の炎症パターンが違うこと。
リウマチでは屈筋腱に腱鞘滑膜炎がみられるが、指の伸筋腱には腱鞘はないため、皮下や腱周囲を中心に炎症を起こしてくるもの、関節包や腱の付着部で起こる炎症や骨破壊像は脊椎関節炎によるものであることが示されていました。
ここでも超音波による診断が大活躍しますね。

面白かったのは、開業の松井先生が提示されていたポスターです。
これは、発症間もない、炎症やリウマチ活動性が少ない患者さんでは、診断当初からMTX6~8mgとTNFα製剤(ヒュミラ、レミケード、シンポニーに限る)を最大量投与して徹底的にリウマチをやっつけることで、1年間寛解を維持できた人はスパッと治療を止めて、DRUG FREE寛解に90%以上持ち込める!というインパクトの強い発表でした。
DRUG FREE寛解とは、お薬を全部やめられる、ということで、本当だとすれば夢のようなお話です。
現在ヨーロッパリウマチ学会や日本リウマチ学会で推奨する、リウマチと診断したらまずMTXを十分量使用して、それでも寛解に至らなければ各種生物学的製剤を使用する。という方針ではなかなかDRUG FREEは難しい現状を考えれば、希望される方は試してみてもいいかもしれません。
その際に問題になるのは、最初から月数万円の高額な治療費がかかってしまうことですが、もしDRUG FREEが達成できれば、治療にかかるTOTAL COSTとしては一番安くなるのかもしれません。

しっかり勉強して、水炊き、もつ鍋、博多ラーメンを満喫した日本リウマチ学会。
明日からの診療がさらに楽しくなっちゃいます!

2017.04.23 | コメント(0)

ゼルヤンツ全例調査中間報告と当院のリウマチ治療方針

3年前に発売されたリウマチのお薬ゼルヤンツ 注射薬である生物学的製剤と同等の効果が得られる内服薬であるため、最近その使用状況がぐっと伸びてきているようです。
当院でも少しずつ使い始めていますが、概して早く効き、十分効きます。

今回はその3周年講演会にて全例調査の中間報告を拝聴してきました。

お薬の適応は
MTX(リウマトレックス、メトレート)を週に8㎎以上、3か月間使用してもコントロールが不良のリウマチに対して使用することになっています。
また、投与禁忌として
重度の肝機能障害
好中球500/mm3未満
リンパ球500/mm3未満
Hb8g/dl未満
が上がっています。

ORAL STANDARD試験ではMTX効果不十分症例において
生物学的製剤ヒュミラと同等の効果が示されており、
ORAL STEP試験では、生物学的製剤TNFα阻害薬(レミケード、ヒュミラ、エンブレル、シンポニー、シムジア)で効果不十分症例においても、厳しいながらも改善が示されています。(ACR20改善率 40%:プラセボ20%、3か月DAS28-4(ESR)<2.6寛解達成率 6.7%:プラセボ1.7%) また、寛解後にゼルヤンツを中止した場合、1年間で24%(約4人に1人)が寛解を維持できていたことも示されました。 発売当初懸念されていた悪性腫瘍発生の可能性については、96か月の観察にて他の生物学的製剤と比べて同等であり、ゼルヤンツが悪性腫瘍を起こしやすいという懸念は払拭されています。 特徴的な注意点としてはやはり帯状疱疹で、
生物学的製剤では0.7%~1.09%であるのに対し、ゼルヤンツでは3.8%でした。
50歳以上の女性でやや多く、日本人、韓国人で多くみられるようです。
また、複数の神経節にわたる播種性帯状疱疹も発生がみられているため、皮膚のピリピリ、ひりひりするような痛みが出現したり、皮疹が現れた時には内服をすぐに中止し、次の予約を待たずに速やかに医師に受診することが大切です。

帯状疱疹の詳細についてはこちらのサイトを参照ください。

当院でもゼルヤンツを数人の患者さんで使い始めています。
生物学的製剤で注射部位反応などの副作用が出てしまう方
生物学的製剤が効果不十分な方
などで使用し始めましたが、概してリウマチのコントロールはよく、
現在では生物学的製剤の注射薬と同様に患者さんに選択していただいています。

当院の方針としては
まずはリウマチ治療の基本であるMTXを16㎎まで速やかに使用すること。
副作用(採血の異常、嘔気、だるさ、脱毛など)でどうしてもMTX単体でリウマチがコントロールできない場合には
1.まだまだリウマチの勢いが強いとき
  生物学的製剤またはゼルヤンツをお勧め
2.だいぶリウマチの勢いが弱まっている時
  MTX、ゼルヤンツ以外の経口内服薬の併用をお勧め
しています。

また、生物学的製剤は基本的に自己注射薬を使用しています。
リウマチが寛解に入った場合には2か月分処方することで、患者さんの来院(採血)頻度も少なくしてあげられるメリットがあります。
また、投与間隔延長や、投与量の調節などもしやすいメリットがあります。

生物学的製剤の選択としては
1. MTXが10~12㎎以上内服できている場合
  ヒュミラ
2.MTXが8㎎までしか内服できない場合
  エンブレル、アクテムラ、オレンシアから選択する
3.MTXが全く飲めないとき
  アクテムラ、オレンシアから選択する
  としています。

ヒュミラはMTXが十分に内服できると強い効果を発揮します。早期の関節リウマチ患者さんで、速やかに寛解に持ち込み、ヒュミラを中止するBIO-freeを目指す場合に選択することが多いです。価格が他のお薬よりも高いところが難点です。

エンブレルは安定した効果が得られ、寛解が得られれば半量投与にできる点が良いところです。
妊娠希望の患者さんではMTXを中止して、エンブレル単体でコントロールできるのが非常に特徴的です。

アクテムラはMTXを減量、中止しやすい特徴、またMTXが内服できない患者さんでも十分に効果を発揮する特徴があります。
CRPや血小板が高い症例ではよく効くのではないか、と言われています。
また、価格もほかの生物学的製剤に比べて安いため、経済的な点からも選択しやすいお薬です。
アクテムラはほかの生物学的製剤が効果不十分だった時にも効果を期待できるお薬です。

オレンシアは感染症のリスクが他よりも低い特徴があります。最近ではリウマチ因子(RF)が高い症例ではよく効くのではないかといわれています。MTXが飲めない方でも良好な効果が期待できます。

認知症やMTXの内服方法が理解できない方には、月に1回来院して当院で注射を行うシンポニーを選択しています。

シムジアは使用開始時に高濃度(2本)の投与ができ、炎症部位に集積しやすい性格を持つため、非常に勢いの強いリウマチや、他の生物学的製剤が効果不十分な時に良い適応となると思います。また、エンブレルとともに妊娠希望の患者さんにも選択できるお薬です。

ゼルヤンツはMTXの量に関わらず、MTX8㎎以上で効果不十分だった時に、注射がどうしてもいや、という患者さんに選択していただくことができます。価格はヒュミラと同等で一番高いのがデメリットですが、経口内服薬で生物学的製剤と同等の効果というのが最大の特徴になります。

いずれにしても、採血データ上の炎症だけに惑わされず、丁寧な触診と超音波診断を用いて、小さな関節一つに至るまでしっかりとリウマチをコントロールして、関節が壊れないリウマチ治療を行うことが当院の治療方針です。

2016.07.24 | コメント(0)

第60回日本リウマチ学会2日目~3日目

今年のリウマチ学会が終わりました。

昨年に引き続き今年も、
超音波を中心とした画像診断
リウマチの痛みの診断と治療
経口内服薬の併用による治療効果
リウマチと鑑別を要する疾患(特に乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、リウマチ性多発筋痛症)
に注目して3日間聴講してきました。

MMP-3
リウマチの大切な検査項目である、MMP-3は
軟骨障害と関連しており、MMP-3が高値の場合には関節裂隙の狭小化がリスクとなる。
軟骨が溶かされることによる関節裂隙の狭小化(Joint Space Narrowing)は、骨に穴が開くBone Erosionよりも関節の動きが悪くなるため、MMP-3が下がるようにリウマチをコントロールすることが必要。
MMP-3はリウマチの早期から上昇しているが、PSLの使用、腎障害、SLE、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、乾癬性関節炎(PsA)、反応性関節炎、結晶性関節炎などでも上昇するため、リウマチに特徴的な検査ではない。

リウマチの画像診断
症状は寛解していてもレントゲン上の変化が進行する症例があり、Carry Over Effectと呼ばれる。
全身MRIでは発症6か月以内の早期RAでも、35%に頸椎環軸関節の滑膜炎が認められており、頸椎のレントゲン検査は初診時に行っておく必要がありますね。
ガイドラインでは年に1回のレントゲン検査が推奨されていますが、特に治療初期や再燃時には3~6か月に1回レントゲン検査をしたほうがよいかもしれませんね。
もちろん、関節の触診所見だけでは不十分で、触診では検知できない関節超音波でわかる残存滑膜炎もありますので、痛みや腫れが残っている関節では関節超音波を施行してエコー寛解を目指すべきでしょう。
残存滑膜炎(residual synovitis)はリウマチ再燃のリスクになります。
残存滑膜炎の残っている寛解は、instable remissionとも呼ばれていました。

また、HOPEFUL STUDYでは早期に寛解導入してBIO休薬した後も、構造的寛解が維持されています。
もちろん、再燃した場合は別ですが、安定して寛解が維持できているならBIOの休薬にtryする価値はあります。

超音波セッションでは、乾癬性関節炎のまとまった超音波画像が提示されており、勉強になりました。
触診では付着部炎ありと検知したものは26人中10人 38.5%ですが、超音波では18人69.2%に認めたとのこと。
リウマチの関節と同じで、超音波でしか検知できない付着部炎もあるのでしょうね。
今後、超音波でしか検知できない付着部炎の病的意義が検討されていく必要があるでしょう。
また、乾癬性関節炎では、関節内の滑膜炎ではなく、皮下組織の炎症がある場合もあり、エコーで鑑別が可能という発表がありました。

治療前のMRIで骨炎を認めた関節に超音波上の残存滑膜炎が残りやすいとの発表もありました。
また、40関節(DAS28関節+足関節+足趾MTP関節)の評価では、PDUSスコアが3点以上で生物学的製剤中止後6か月以内に再燃しやすいとのレビューもありましたが、やはり超音波検査で滑膜炎が残っている時に治療薬を弱めてしまうことは再燃のリスクになるということですね。

治療薬
イグラチモド
MTXと併用することでとても有効なイグラチモド(IGU)(コルベット、ケアラム)ですが、MTXと併用しなくても同様に有効であるとの発表もありましたが、市販後全例調査の結果としてはMTXと併用するほうが効果が高いとのことでした。
リウマチ自体がTNFαが非常に効果のある群、IL-6が効果的な群、それでもだめな群など、単一の疾患ではなく、多様性のある疾患概念であり、heterogeneityと称されていました。そのため、MTXのようなmultiple targetsの治療薬が有効であり、異なる作用機序を持つ治療薬の併用が合理的な治療戦略になるとのことでした。生物学的製剤使用前はもちろん、治療開始時からMTXとIGUを併用することもよいのではないか、と発表されていました。面白いですね。
イグラチモドでは、肝障害の他に、間質性肺炎にも注意して使用することが必要です。報告された間質性肺炎の63%は16週以内に、79.6%は24週以内に発生していたとのことです。

リウマチの鑑別疾患としては
ポスター発表では閉経期エストロゲンの低下に伴う更年期障害の部分症としての関節痛と、乳がん治療のためのアロマターゼ阻害薬使用に伴う同様の関節痛が報告されていました。
これは当院でも日常の診療で頻繁に出会うため、鑑別としてはとても大切なのですが、あまりこれまで声高には言われていませんね。
当たり前すぎるのでしょうか。でも、みなさん困っているところなので、とてもいい発表です。
触診でも腫れていないため、鑑別は可能ですが、痛みの原因として患者さんに説明してあげると安心されます。その際、産婦人科で女性ホルモンを測定し、ホルモン補充療法を行うことで関節痛は消失します。

診断についてのポスター発表では
診断のための抗ガラクトース欠損IgG(CARF)は今はあまり測定することはありませんが、これについての測定意義は今ではもうない、との発表もあり、面白かったです。当院では、抗核抗体高値の時に測定すると、これが引っかかることがあります。

また、健康診断で関節症状のない患者さんにRFを測定する有用性は低いとの発表もありました。確かに健康診断でリウマチ因子が陽性だったと来院される患者さんもよく見られますが、ほかになにも症状がない時には、念のため関節の触診だけ行い、「体質としてはリウマチを持っている可能性があるので、今後痛みや腫れが出現したら早期に受診してください。」とお伝えして終わることが多いですね。家族にリウマチの方がいる場合には、詳しい検査を行うこともあります。

今はリウマチ学会からの帰りの新幹線でこれを書いています。
そろそろ名古屋に着くな、、、。
続く!

2016.04.24 | コメント(0)