院長ブログ

慢性の腰痛にひそむ落とし穴

今日はマリオットホテルで開催された
3A Forum 2014 in 愛知
に出席してきました。

小児のリウマチともいわれる若年性特発性関節炎(JIA)
について、愛知医科大学小児科の鬼頭敏幸先生から
強直性脊椎炎(AS)について
藤田保健衛生大学整形外科の森田充浩先生から
乾癬性関節炎(PsA)について
名古屋市立大学皮膚科の森田明理先生から
それぞれお話がありました。

関節リウマチの診断と治療は
一般にも少しずつ広まってきています。
(まだまだ超音波診断や寛解導入を目指した治療は
 十分に広まっているとは言えませんが、、、。)

しかし、さらにはJIA、AS、PsAに至っては
まだまだ診断もままならないのが現実です。

当院にも毎日さまざまな医療機関に受診しても
十分に治らなかった腰痛患者さんが来院されます。

ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、腰椎すべり症
などと診断されているものの中の多くの構造的変形そのものは
本当の痛みの原因ではなく、
仙腸関節や筋筋膜が慢性腰痛の原因であることがほとんどです。
そのために当院ではトリガーポイント注射とリハビリを重視して
慢性腰痛の治療にあたっています。

しかし、中には見逃してしまえば
悪化していく腰痛もあります。
その一つが、強直性脊椎炎です。

腰痛で発症することも多いのですが、
しっかりとこの病気であると診断されるまでには
平均で9年程度を要するといわれています。
中には40年たって、ようやく診断される症例もあります。

診断のためには、
腰痛で一般的に撮影される腰椎レントゲンだけでなく、
慢性の腰痛であることや
肘、膝、足などの腱の付着部炎
末梢関節炎などの随伴症状などにも目を向けて
骨盤、仙腸関節のレントゲンや
MRIでの仙腸関節の炎症所見
採血にて軽度の炎症反応や
HLAといわれる免疫反応を調べることが大切です。

中でも有名なHLA B27は
日本人では陽性率0.3%とも言われており、
アメリカの6%やノルウェーの14%に比べはるかに低い様です。

治療には痛みどめであるNSAIDS、特にセレコックスや
生物学的製剤の使用が大切です。

リウマチと違い、MTXを併用しなくても
生物学的製剤のTNFα阻害薬の効果が得られるのが不思議な点です。

リウマチとは免疫状態が異なるのでしょうね。

診断にはまず腰痛患者さんが炎症性背部痛に当てはまるかどうかを
炎症性背部痛のBerlin基準でチェックします。

Berlin基準
50歳以下で、3か月以上持続する背部痛があり、下記2項目が陽性であれば
炎症性背部痛と診断します。(感度70.3%、特異度81.2%)
1.朝のこわばり>30分
2.背部痛は体操によって改善されるが安静では改善されない。
3.睡眠時間の後半のみに、背部痛のために起こされる
3.左右移動する殿部痛

そして、体軸性脊椎関節炎(Axial SpA)の診断は
炎症性背部痛であればレントゲンにて脊椎、仙腸関節をチェックします。
レントゲンが陰性でも以下のうち
1.腱付着部炎
2.家族歴
3.眼症状(ブドウ膜炎)
4.交互に繰り返す殿部痛
5.非対称性関節炎(大関節に多い)、
6.NSAIDs(ロキソニンやボルタレン、セレコックスなど)への良好な反応
3つ以上当てはまれば80~95%の確立で診断できます。
1~2つならば35~70%(さらにHLA-B27陽性ならば80~90%)
1つも当てはまらなければ14%(HLA-B27陽性なら60%、さらにMRI陽性ならば80~95%)
が脊椎関節炎の診断となります。

慢性の腰痛に悩む患者さんはたくさんいらっしゃいます。
診断には、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの
画像に写るわかりやすいものに限らず
患者さんにしっかりと触り、
レントゲンには写らない痛みの原因を診断することが大切ですね。

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2014.07.24 | コメント(0)

ヒュミラ6周年記念講演会

先日東京の虎の門ヒルズで行われた
ヒュミラの6周年記念講演会。

僕の大学の同級生でもある宮本先生が
演者の一人として壇上に立つということで
それも楽しみに出席しました。

学生時代に一緒に遊んでいた宮本君が
今ではえらい先生になっていました(^^)
CIMG9739

宮本先生は、
リウマチと診断された初診時の説明と
今後目指せるべき治療のゴールの説明がとても大切と強調していました。

僕は初診時から3か月程度でMTX16㎎まで増量して、
その患者さんのMTX最大容量を見極めるようにしていますが
宮本先生はもっと早く、8㎎から開始して
2週間で12㎎、4週間で14㎎まで増量するそうです。(early escalation)

いかに早く、強くリウマチを寛解に持ち込むかはとても大切ですし、
容量が増えたときにおこってくる貧血や肝障害が見えたら
すぐに容量を減らす。
HIT EARLY AND HARD、 HIT AND AWAYは
それこそリウマチ専門医の腕の見せ所です。

さらに、宮本先生は
予後不良因子であるすでに関節破壊がある人やリウマチ因子が陽性の人などでは
診断時から生物学的製剤の必要性についても触れておき
患者さんがある程度よくなったところで満足せず
しっかりと治療ゴールである寛解を目指すように導くとのことです。

僕も初診時にリウマチと診断したら
スポーツでも仕事でも、リウマチを意識せずに
思いっきりできる状態を目指しましょう
と言っています。
そのあと看護師さんからのリウマチ教室を受けていただき
生物学的製剤と寛解について患者さんに知ってもらっています。

さて、そのあとのご講演は産業医大の田中良哉先生から
これまでのヒュミラのエビデンスについてお話がありました。

しかしおもしろかったのは竹内先生によるMTX投与量についてのお話。
海外ではMTXPG(MTXpolyglutamate)と言って、MTXの血中濃度が測れるそうです。

それにより海外ではMTXの投与量が治療有効域に入っているかどうかわかるとのことです。
ARDonline 2014 april 12にてSchiff先生が発表したのは
経口のMTX投与では15㎎以上内服しても血中濃度はプラトーとなり上がらない
というものでした。
ということは、実は15㎎以上の内服には意味がないのではないか。
という疑問が生じます。

竹内先生が慶応大学のRA患者さんで検討した日本人のMTXPG濃度を測定したMAGIKstudyと
海外でのMTXPG濃度測定の報告を比較すると
海外ではMTX15㎎内服することでようやくMTXPGが治療有効域に達するのに比べ
日本人ではMTX8㎎で十分有効血中濃度に達していました。

しかし、実際に患者さんを診察していると
MTX8㎎では十分に寛解に達しない患者さんはたくさんいます。

この点を竹内先生に質問してみると
概して日本人では、外人に比べて少ない量のMTXで治療可能ですが、
やはり個人差はあり、それは腸管からの薬剤吸収率であったり
遺伝による差であったりなのではないか、
とおっしゃっていました。

現在では、HIT EARLY and HARDの作戦で
早く、強くリウマチを鎮静化するために
早期から十分なMTXを使用して寛解導入を目指して
寛解導入するか、もしくは肝障害や貧血などの副作用が出現したら
MTX容量を減らしています。

早く日本でもMTXPGを測定して
患者さん個人個人で本当に必要なMTXの量が測れるようになるとよいですね。

2014.07.22 | コメント(0)

第58回日本リウマチ学会

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24日から日本リウマチ学会に参加しました。

今回も2演題エントリーして、
ポスター発表でした。

アクテムラの妊娠症例5例6件の検討と
超音波によるCRPに頼らないリウマチ診療。
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自分の発表を読んでくれている人がいると
それだけ興味を引くテーマを発表できたのかな、と
嬉しくなります。

さて、今回の学会3日間のおさらいです。
やっぱり一通りBIO全盛の時代も落ち着いてきて
薬価の安さも相まって従来の抗リウマチ薬の併用はトピックですね。
新しい内服薬、ゼルヤンツの報告については、
まだ全国でも症例数が少ないためか目につかなかったですね。

・MTX単剤、BUC単剤よりも、併用のほうが効果あり。
・2年以上落ち着いていたリウマチ患者さんの内服薬を
 同じまま継続した場合には22%が再燃。
 プラセボに変えた場合には38%が再燃。
 裏を返せば、中止しても60%の人は再燃していないとのこと。
 
 では、プラセボで再燃した38%の人に
 もとのお薬を再開した場合、3か月後には半数が無効だったとのこと。
 1年後では35%の人のリウマチは再度活動性なしに。
 これは1996年のLANCETに載っていた論文の引用でした。

ということは、2年以上リウマチが落ち着いていた場合
お薬をやめるチャレンジをすれば6割の患者さんは再燃しないけど
再燃した場合にはもともとのお薬で再度寛解に戻れるかはわからないよ。
ってことですね。

やはり、経済的な理由や副作用がなければ
あえて休薬にチャレンジするより
継続して内服していたほうが安心かもしれませんね。

・レミケード使用中のPCP肺炎のリスクは
 PSL6㎎以上の使用、既存肺疾患、65才以上
 の条件を多く持つほど増える。

・リウマチの治療は世帯年収にかかわらず
 一定の割合で高額になる。
 これは公的補助がないことによりますね。

・リウマチの鑑別診断としての自己炎症症候群
 TNF受容体関連周期熱症候群TRAPS 
 家族性地中海熱FMF
ありふれた病気ではありませんが、知っておかなくては。

 
強直性脊椎炎や乾癬性関節炎も、リウマチ医として生物学的製剤を駆使して
治療にあたっていかなくてはならない病気です。
・強直性脊椎炎の問診
 炎症性背部痛(IBP) 下記のうち4項目以上でIBP
 (安静で改善しない。運動で改善。潜行性に発症。40歳以前に発症。夜間の疼痛。)

 ブドウ膜炎、皮膚疾患、炎症性腸症候群、食中毒、尿道炎
 脊椎関節炎の家族歴、HLAの検査歴
 フォローアップはBASDAIとBASFIで。
 強直性脊椎炎に対するTNF阻害薬は
 年齢が若いほど、CRPが高いほど、機能障害が少ないほどよく効く。

 
 改訂ニューヨーク基準は骨格系の異常が現れてからでないと診断できない。
 また、末梢病変については考慮されていない。
 non-radiologic SpA (レントゲンに現れない時期の脊椎関節炎)は
 腰痛+MRIでひっかける。
 TNF阻害薬を使っても骨化阻害は困難だが、早期に使えば可能かもしれない。

 
・乾癬性関節炎
 発症から6か月で50%以上の患者さんに骨びらん出現
 皮膚病変が先行するものが70%。関節炎が先行するものが15%
 乾癬性皮膚炎は関節炎の前段階ではないか。
 皮膚科に通院中の乾癬患者946人をリウマチ医が診察したら、
 関節炎は30%に認められた。そのうち41%は関節炎が見逃されていた。
 頭皮、殿裂肛門周囲、爪の乾癬は関節炎発症のリスク。
 3か所以上にわたる乾癬性皮膚炎も関節炎のリスク
 乾癬に関節炎が加わると爪病変が増える。
 
 乾癬性関節炎CASPAR分類:関節、脊椎、付着部の炎症があり、
 乾癬性皮膚炎、爪病変、リウマトイド因子陰性、指趾炎、手足のXpの傍関節骨増殖

さて、今日はこのくらいで。

2014.04.28 | コメント(0)