医療と生活保護
今日のニュースは、生活保護の話題で持ちきりでした。
リウマチの治療の世界を変えた生物学的製剤。
骨破壊抑制効果も高く、
これまでの内服薬だけではなすすべなく、
腫れて痛い関節が次第に壊れていくのを泣く泣く見守った時代を
打ち破ったお薬です。
しかし
保険を使っても3万円~5万円(3割負担の場合)の窓口負担がかかり
なおかつ高額療養費にも達しない、という薬剤費に
効果が高いことはわかっていながらも、
金銭的な余裕がなく使用できない患者さんに遭遇することも稀ではありません。
本来関節破壊を防ぐためのお薬なのですが、
医療費控除となる身体障害3級以上を取得できるのは
関節が高度に破壊されてから、という
大きな矛盾があります。
リウマチの患者さんは若い女性も多く、
これから妊娠、出産、子育てに追われる
経済的にも余裕のない年代の方もたくさん見えます。
家計を考え、自分の痛みや不安を犠牲にする患者さんが実際にいらっしゃいます。
一方、生活保護の方の場合は
医療控除が受けられるため
最新の治療も無料で受給できます。
関節リウマチの生物学的製剤だけでなく、
癌の治療でも医療費は無料。
通院に必要なタクシー代も無料となります。
リウマチで関節破壊が進行すると
働けなくなり、家事もままならなくなり、
若い女性は結婚や出産にも躊躇したり
奥さんが家庭を支えられなくなると
夫は十分に仕事に打ち込めなくもなります。
社会的には労働力、生産力の低下につながり、
少子化、税金収入の低下、生活保護世帯の増加にもつながるでしょう。
リウマチ専門医の日々の診療を通してみると
リウマチ患者さんの関節を最大限正常な状態に保ち
痛みなく社会人としての日常生活と働く喜びを取り戻し
個人の尊厳とアイデンティティーを維持することが、
社会的には生産年齢人口の損失を防ぐことにもつながります。
そのためには、生物学的製剤に対しても
何らかの公的補助が必要であると思うのです。
2012.05.26 | コメント(11)
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