腎臓への影響を考慮した鎮痛薬の使い方
昨日は大阪大学疼痛医学講座の三木健司先生のお声掛けで、あゆみ製薬のweb講演会の会場にお呼ばれしました。
京都医療センター腎臓内科の瀬田公一先生の、腎臓への影響を考慮した鎮痛薬の使い方のご講義を拝聴し、それに対して会場の5名の先生から質問をしてもらうという企画でした。
昔から使われてきたロキソニンやボルタレンなどのNSAIDSと呼ばれる痛み止めは、早く効いて痛みにはありがたい薬なのですが、プロスタグランジンを阻害する事で胃粘膜障害、小腸粘膜障害、腎血流低下といった重篤な副作用をきたすことがあります。
そしてその副作用は、本人の自覚症状なく進行し、自覚症状が出るときには重症化していることがあり得ます。
そのため当院でも、打撲や捻挫などの急性期の痛みに、短期間使用する事にとどめていますが、日本の現状では、様々な痛み止めの中でもNSAIDSが最も多く用いられています。そして、長期に漫然と使用されているケースもまだまだ多く見られます。
そのため、瀬田先生はNSAIDSの長期処方をしている時は採血を行う事。
糖尿病、高血圧など、腎障害のリスクがあるときにはNSAIDSを極力使用しない事。
脱水、ビタミンD製剤などのリスクファクターにも気をつける事。
セレコックスなどのCOX2選択的阻害薬でも急性腎不全の報告があるため油断しない事。
などについて注意喚起を行いました。
慢性腎臓病CKDは、
蛋白尿、cre異常、GFR60ml/分/1.73m2以下が基準となりますが、日本人の8人に1人は当てはまるそうです。
鎮痛薬 アセトアミノフェン、トラマール、トラムセット
アセトアミノフェンは1000mgの内服でロキソニン60mgと同等の鎮痛作用があるそうですが、中枢性にプロスタグランジンを阻害して、末梢性には阻害しないため、腎機能障害は少ないそうです。
米国ではCKD患者さんの解熱鎮痛薬として推奨されています。
また、トラマールや、トラマールとアセトアミノフェンの合剤であるトラムセットも腎障害は少ないと考えられます。
関節が高度に変形している場合や、神経の障害など、なかなか治らない慢性の痛みにロキソニンやボルタレンを毎日何年も内服している方はたくさんおられると思いますが、少なくとも1度トラマールやトラムセットを試してみたほうが良いでしょう。
トラマールやトラムセットは吐き気が出る人が見られるため、自分に合わなければ中止してください。
その場合には、アセトアミノフェンを使うと良いでしょう。
痛みの原因診断と治療
1番大切な事は、本当に現在の痛みが、これまで説明されてきた変形や神経障害から起こっているのかどうか、トリガーポイントなどの筋膜性疼痛からのものではないか診察し、痛みの原因治療がトリガーポイント注射やリハビリで可能かどうか調べる事です。
トリガーポイントが原因であった場合には、トリガーポイントが解消されるにつれて痛み止めもどんどん減っていきます。
さらに痛みにとって大切な事は、
普段からの良質な睡眠
ビタミン、ミネラルの整った栄養バランスの良い食事
運動習慣
です。
全身のストレッチやラジオ体操で体の伸びにくい場所、関節の固い場所を探して、それを普段からほぐしておく事もとても大切です。