今夜はリウマチ治療研究会に参加してきました。
少人数の会で、名古屋医療センターの金子先生、
愛知医科大学の平野先生、名古屋市立大学の難波先生といった
馴染みの顔ぶれに
東邦大学の膠原病内科教授の亀田秀人先生をお迎えしての
ざっくばらんにお話しできる会でとても楽しかったです。
名古屋市立大学 膠原病内科の難波大夫先生の症例提示では
ヒュミラが効果不十分であった時にシムジアに変えて効果が得られた症例。
エンブレルで効果不十分だった際に、プログラフを追加併用し、
そのうえでステロイドの関節注射を行い寛解が得られた症例
などが提示され、ディスカッションされました。
僕も十分量のMTXと生物学的製剤まで用いても、どうしても腫れが残る関節などに
ステロイドの関節注射をして、寛解導入、維持できることはよく経験します。
やはり、ベースコントロールとしてTNFやIL-6をしっかりと抑制したうえで
局所に残った強い炎症を関節注射でダメ押しするのは
完全寛解に導入させるよい方法だと思います。
よく患者さんには
関節リウマチは火事と同じで、
燃え盛ってから消火しようとすると大変で
勢いの強い火事(リウマチ)では消化器(内服薬)だけでなく
消防車(生物学的製剤)まで必要なんです、と説明します。
一度しっかりと消防車に消火してもらった後は
残ったボヤは消化器でも十分に消すことができます。
身体の中で、炎症性サイトカインが暴れまわっているときには
まずサイトカインの悪循環を断ち切るためにも
早期からの強力な治療でしっかりとリウマチを抑えることが大切なんですね。
そして、亀田教授からは
実臨床においては合併症や本人の経済的な事情などで
必ずしも寛解導入に必要な十分な治療が全員にできるわけではなく
亀田先生の成績でも寛解が得られているのは60%であること。
TNFとIL-6の血中濃度を測定した研究からは
MTXの投与によってTNFの血中濃度は変わらないが、IL-6は下がることから
初診時のTNF濃度は予後不良因子としての意味合いがあり、
IL-6は治療経過を測定する疾患活動性の指標としての意味合いがあることが示されました。
そのため、リウマチをよりよくコントロールするためにはMTXがIL-6を抑制することが必要ですが、
血中TNF濃度が高いとMTXが十分な力を発揮することができないため
TNF阻害薬であるレミケード、ヒュミラ、エンブレル、シンポニー、シムジアなどを使用すると
MTXが本来の力を発揮できるようになり、IL-6が下がるとのことでした。
現在はTNFやIL-6の血中濃度を保険を使って検査することができないので
より効果的な治療を行うためには保険適応でTNFやIL-6を測れるようになることが必要です。
(現在はCRPやESRが炎症の強さの指標として使われていますが、
発症早期や寛解に近い状態ではいずれも陰性になってしまい、
CRPやESRの値はあてにならなくなります。)
現在は16mgまで保険で使用できるMTXですが、
治療ガイドライン上は
3か月でMTXを十分量まで使用しても
効果不十分であれば生物学的製剤を使用すること
または予後不良因子である
・抗CCP抗体陽性、RF陽性
・すでに関節破壊が見られる
・高疾患活動性・日常生活動作に大きな障害がある
・肺合併症や血管炎などの関節外症状
が見られる場合には、最初から生物学的製剤を投与してもよい
となっています。
リウマチの勢いが強いときには、
少し値段は張りますが、早期から生物学的製剤を使用することで
内服だけで3か月以上治療継続するよりも
関節の痛みや腫れで仕事の質を落とすことなく
リウマチをコントロールしていくことができるということですね。
もう一つ、亀田先生からのお話しで
妊娠と生物学的製剤について
臍帯血の生物学的製剤濃度を調べた論文が紹介されました。
レミケードやヒュミラは胎児血中に高濃度で移行しますが、
シムジアはほとんど移行しなかったというものです。
エンブレルは妊娠発覚までの使用や
時には妊娠中に使用しても安全であるという
症例報告も多くみられるようになってきました。
第7番目の生物学的製剤シムジアは
妊娠にも安全である可能性が考えられています。
(まだ本当に安全かどうかは、今後の症例報告を待つ必要はあります。)