目次
変形性関節症とは
変形性関節症は関節の軟骨がすり減ったり、関節の形が変形することで、関節の痛みや動きが悪くなる病気です。
膝や股関節、肩や指の関節でよく見られますが、足関節や肘、足趾でも発生することがあります。
関節が変形するとO脚になったり、一歩一歩歩くのが痛くなったりします。膝の伸びが悪くなったり、股関節が開かなくなったり、肩が上がらなくなったりします。
関節に痛みがあり、レントゲンで関節の変形を指摘されると変形性関節症の診断となりますが、変形自体が痛みの原因になっていないことも多く、筋肉や靱帯などの関節周囲の軟部組織も丁寧に触診して痛みの原因を追究することが重要です。
変形性関節症の原因
長年にわたり関節に負担をかけ続けることで軟骨や骨にストレスがかかり、軟骨がすり減ったり、骨棘ができたりして次第に変形が強くなっていきます。関節の骨折の既往歴も将来の変形につながることがあります。日常生活や仕事、スポーツによる、偏った筋肉の使い方は、筋肉のバランスが悪くなり、関節のストレスを生むため、早期に関節周囲の筋肉バランスを改善することも大切です。
変形性関節症の症状
関節の痛みや腫れ、可動域制限がみられます。関節の動き始めや夜間に痛みを感じることもあります。変形性股関節では股関節の開きが悪くなったり、一歩一歩で股関節の痛みが出ます。変形性膝関節症では膝の曲げ伸ばしの可動域が悪くなったり、O脚変形やX脚変形がみられ、歩くと膝に痛みが出ます。変形性肩関節症では肩の上がりが悪くなったり、背中が触りにくくなったりします。指の変形性関節症はへバーデン結節と呼ばれ、指の関節が変形することで指が腫れたように見えて、痛みがあることもあります。
変形性関節症の検査
診察で関節の変形や可動域制限、膝関節に水が溜まっているか、関節の圧痛所見、どのような動きで痛みが誘発されるかなどを見ます。レントゲン検査では関節の変形や他の疾患との鑑別ができます。関節が腫れている場合には関節の水を抜いて検査に出すこともあります。また、血液検査でリウマチや感染症など、MRI検査では骨壊死や半月板損傷、靱帯損傷などの他の病気との鑑別を行うこともあります。
変形性関節症の治療
治療の中心はリハビリです。理学療法士により関節の筋肉のアンバランスを改善し、関節にかかる負担を改善します。変形性関節症は変形だけが痛みの原因ではなく、骨の変形と周囲の筋肉や神経、半月板など様々な軟部組織の痛みが混在することが普通です。軟部組織の痛みにはハイドロリリース注射も有効です。
薬物療法では痛みを和らげる薬や、関節内の注射を使用します。しかし、リハビリで関節のバランスを整えることなく、痛み止めだけを飲み続けることは副作用の点からもお勧めできません。
外用消炎鎮痛薬(シップ剤)
貼るタイプの薬で、痛みのある部分に貼ることで痛みを軽減します。
非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
痛みや炎症を抑える効果がありますが、長期間の使用は胃腸障害や腎臓障害などの副作用があることがあり、漫然と内服を続けることは注意が必要です。
例:ロキソプロフェン(ロキソニン®など)、ジクロフェナク(ボルタレン®など)
アセトアミノフェン
解熱作用と鎮痛作用があり、副作用が比較的少ないです。1回に1000㎎、1日4000㎎まで内服できますが、長期の大量服用では肝障害に注意が必要です。
弱オピオイド
NSAIDsのような胃腸障害や腎障害の副作用がなく、長期に内服しても比較的安全です。痛みを止める効果と、脳の知覚過敏を抑える効果があります。飲み始めの時期に吐気が強く出る人もあり、その場合には中止して医師に相談しましょう。
例:トラムセット®、トラマール®、ワントラム®、ツートラム®など
デュロキセチン
抗うつ薬として用いられていますが、脳の知覚過敏を抑える作用もあるため、現在では慢性の痛みの治療、変形性関節症の治療によく用いられるようになりました。
NSAIDsのような胃腸障害や腎障害の副作用がなく、長期に内服しても比較的安全です。
関節内注射(ヒアルロン酸)
昔からよく使われている関節内の潤滑剤です。関節の中に痛みの原因がある人では有効な場合があり、今でも使用されています。レントゲンで変形が指摘されても、周囲の軟部組織に痛みの原因があることも多く、ヒアルロン酸の注射で治らない痛みの場合には当院にご相談下さい。
例:サインバルタ®など
関節内注射(ステロイド)
関節内の炎症が痛みの原因である場合に使用します。関節に水が溜まっており、穿刺した水の色が濁っているときに炎症を疑います。超音波で関節内に炎症が疑われるときにも使用されますが、変形性関節症で関節内に炎症が起こることは少なく、その場合にはリウマチなどの関節内炎症性疾患も考え、採血を行うことがあります。
関節内注射(PFC-FD)
再生医療と呼ばれ、変形性膝関節症に対する自費の治療になります。採血した血液を遠心分離処理を行い、血漿成分を関節内に注射することで、炎症抑制効果がみられ、痛みが軽減します。手術適応の変形でも痛みが改善する人が50%と報告されており、保険の治療では痛みが改善しない場合には変形性膝関節症の有効な治療手段になります。
装具療法
関節が不安定になったり、変形が強い場合には杖を使ったり、膝関節装具(サポーター)やインソールを作成したりして、関節にかかる負担を減らすことも有効な場合があります。
手術
変形が強く、関節の可動域制限が強い場合や痛みが強い場合には人工関節置換術や骨切術などの手術が必要な場合もあります。
まとめ
変形性関節症は関節の軟骨の摩耗や関節の変形により痛みや動きずらさを起こす疾患です。現在治療中の医療機関では取れない痛みは当院にご相談下さい。
この記事の執筆者プロフィール
経歴
1999年
国立浜松医科大学卒 国立国際医療センター 内科研修医
2001年
東京災害医療センター 救命救急レジデント
2002年
刈谷総合病院 整形外科
2006年
名古屋医療センター 整形外科リウマチ科 / 名古屋医療センター 卒後教育研修センター指導医
2010年
Los Angeles Veterans Affairs hospital留学
2011年
さいとう整形外科リウマチ科を平和が丘に開院
主な著書
「あなたも名医! 運動器エコー 痛みの臨床」など6著書(共著含む)
当院で行える治療・処置のご紹介
当院では、様々な症状に合わせた治療・処置が可能です。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
慢性的な痛みや
他院で改善しなかった症状など一度当院へご相談ください
痛みと痺れの原因を多角的に鑑別診断し
内服・注射・リハビリだけでなく、栄養・生活習慣改善・姿勢改善・運動習慣改善など
様々なアプローチで改善に導きます。
どうぞお気軽にご相談ください。
さいとう整形外科リウマチ科
院長 斉藤 究
さいとう整形外科リウマチ科
院長 斉藤 究