同じく今週の土曜日、
僕が名古屋医療センターで一緒に働いていた
高橋伸典先生による
The Academy of Rheumatology(AOR) の報告会がありました。
今回のAORはシンガポールで9月に2日間行われました。
リウマチでは
炎症の期間×炎症の強さ=関節のダメージ
といった方程式が成り立ちます。
欧米では、いきなりリウマチ専門医に受診することは難しく
まずは家庭医と呼ばれるかかりつけ医に受診することになります。
MTXと生物学的製剤という治療が確立した現在、
以下にリウマチを早期診断して治療介入するか、
といったことが重要視されるようになってきており、
そのために米国、欧州のリウマチ学会が手を合わせて
早期診断のための基準を作ったり、
超音波やMRIによる画像診断を併用したりします。
しかし、早期のリウマチでは
レントゲンは80%で陰性
CRPは50%で陰性
リウマチ因子RFや抗CCP抗体は40%で陰性で
診断がとても難しいものです。
そのため早期にリウマチの可能性のある患者さんを
家庭医に拾い上げてもらい
リウマチ専門医へ紹介するためのAlarm signalsとして
・3関節以上の腫脹
・MTP/MCP関節の腫脹(Squeeze test陽性)
・朝のこわばりが30分以上
の3項目を挙げています。
そのうち5人に1人(22%)が関節リウマチの診断がつきますが、
5人に2人(37%)はUndifferenciated arthritis(UA)
未分類関節炎に振り分けられ、経過を見ていくことになります。
UAのうち40%は関節リウマチに、
40%は自然寛解に至るとされますが、
それではどのくらいの期間で診断がつくかというと
time spanについてははっきりしたdataはないようです。
リウマチの治療にはMTXの使用が欠かせなくなってきていますが
診断の難しい超早期のリウマチ患者さんに対して
副作用も含めた利益、不利益を考えつつ
投与したほうがよいだろう、という患者さんを選別するためには
2010ACR/EULAR CRITERIAが用いられます。
すなわち、
・関節腫脹の場所、腫脹している関節の数
・リウマチ因子、抗CCP抗体の有無
・炎症の期間(6週間以上か、以下か)
・炎症反応の有無それぞれをスコア化して、診断の助けとします。
開業して思うことは、
大きな病院に比べて患者さんが気軽に受診していただける分、
関節の痛みを訴える方の中には超早期の関節リウマチの方も
総合病院以上に出会う可能性も高く、
それらを正しく関節リウマチと診断することは
リウマチ専門医でもとても難しいとあらためて思っております。
そのため関節超音波を駆使したり、
アクセスが良いことを武器にしてこまめに経過を追わせていただき、
リウマチの内服を始めるべきか、まだ待つべきか
常に考えながら治療にあたっています。