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関節リウマチ 妊娠中の薬物療法のトレンドとその考え方

関節リウマチ 妊娠中の薬物療法のトレンドとその考え方

今日は新宿の京王プラザホテルで開催された
国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター
開設7周年記念フォーラムに、
当院の看護師4名とともに出席してきました。

リウマチの妊娠では、
最近でこそ流産の可能性の高いMTXを中止して
TNF-α阻害薬を使用してリウマチをコントロールしつつ
妊娠を待つ、という方法が確立されてきましたが、
従来はステロイドのみしか使用されず
妊娠を待っている間に関節が壊れていく、という
大きなジレンマがありました。

関節リウマチと妊娠にフォーカスを当てた今回のフォーラムでは
妊娠と薬物に対するエキスパートの先生が壇上に立ち
現在の問題と、わかってきたエビデンスにつきお話しいただきました。

虎の門病院薬剤部の林昌洋先生からは
倫理的に妊娠期の薬物療法では薬物投与群とプラセボ群の
比較試験が行えないこと
また、たまたまある薬を内服していた妊婦さんが出産して
奇形が生まれたとしても
内服していない人でも自然発生的な奇形発生が起こり得るため
因果関係が証明しづらいことなど
妊娠期における薬物の影響を論ずることの難しさにつき
お話しがありました。

そのため薬剤添付文書に書かれているのは
ほとんどが妊娠に対する催奇形性が証明されたものではなく
dataがないというのが本当で、
「安全性が保障されていない」という書き方になっています。
薬剤会社も医師も患者も、
リスクを避けるために薬剤の使用を控え
その間にリウマチが進行して関節が壊れてしまう一因となっています。

そのため、現在は成育医療センターが中心となり、
全国に妊娠と薬情報センターが設置され
貴重な一人一人の妊娠症例が登録されています。
(妊娠と薬についてぜひご質問、ご登録を!)

その中から、国立成育医療センター副センター長 渡邊 央美先生より
これまで妊娠期間中を通じて、MTXに暴露したリウマチ患者さんから
情報センターに11人の報告が寄せられ、
そのうち6人が正産。5人が自然流産したとのコメントがありました。

もともとMTXは流産させるお薬であるため
結果は当然といえば当然なのですが、
ALL or Noneの法則からすれば
MTXを内服中に偶発的に妊娠した場合には
異常のある受精卵ならば流産するということになります。

また、男性のMTX暴露について
第一三共株式会社 安全性研究所 主任研究員の
下村和裕先生から報告がありました。

男性が服用したお薬は
男性の生体内利用率を経て精液へ移行し、
また精液量4㏄ほどの中から、女性の膣からの吸収率を経て
女性の生体内利用率があり、それが胎児へ移行する経路を考えると
ほぼゼロに近いことになり、
非常に広い安全域を持っており、有効性がリスクをはるかに上回るとのことでした。

また、精子の形態異常があるとほとんど子宮頸管の粘液を通過することはできず、
運動能の低下があると受精場所に到達できない(ムーア 人体発生学)。

もし精子の遺伝子に損傷があれば、ほとんどが減数分裂の過程で淘汰され
受精部位への到達でも選別され、さらに突然変異した精子が受精しても
初期発生での死亡、着床不能となり、多くの突然変異は流産の原因となるため
精子の遺伝子が損傷されても、必ずしも表現型の以上が発生するわけではない。
とのことです。

そのうえで、人における危険性としては
不妊につながる可能性はあるが、
奇形児の原因が男性の医薬品の服用であることを証明した報告は無いとのことでした。

2011年にパリで行われたteratology annual meetingでも
受胎期に父親がMTXに暴露していた40人中、36人で正産にいたり、
奇形は認めなかったとの報告があったそうです。

その後、特別講演として、膠原病の妊娠と薬研究の第一人者
トロンハイム大学病院 教授のMonika 0stensen先生よりお話しがありました。

その内容については、またblog上で報告します。
今日はここまでにしましょう。

この記事の執筆者プロフィール

さいとう整形外科リウマチ科

院長 斎藤究

さいとう整形外科リウマチ科 院長 斉藤究

院長紹介

日本整形外科学会専門医・日本リウマチ学会専門医・日本整形外科超音波学会会員

経歴

1999年

国立浜松医科大学卒 国立国際医療センター 内科研修医

2001年

東京災害医療センター 救命救急レジデント

2002年

刈谷総合病院 整形外科

2006年

名古屋医療センター 整形外科リウマチ科 /
名古屋医療センター 卒後教育研修センター指導医

2010年

Los Angeles Veterans Affairs hospital留学

2011年

さいとう整形外科リウマチ科平和が丘に開院

主な著書

あなたも名医! 運動器エコー 痛みの臨床など6著書(共著含む)

PROFILE

さいとう整形外科リウマチ科 院長 斉藤究

日本整形外科学会専門医日本リウマチ学会専門医日本整形外科超音波学会会員