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リウマチの医療経済学

リウマチの医療経済学

今日はウェスティン名古屋キャッスルで開催された
RAプライマリーケアセミナーで
座長を務めさせていただきました。

ご講演いただいたのは
静岡県の三宅整形外科医院 三宅信昌先生です。

三宅先生は僕がリウマチ修行をした名古屋医療センターの
大先輩であり、
開業医としても大先輩です。

現在は僕たちの日常診療と
厚生労働省の医療制度とを結ぶための
大切な役割も果たされており、
医療経済についても詳しい先生です。

今後厚生労働省も
医療に使われる薬剤の経済学的効果を重視してくるようで
NNT、ICER、QALY、DALYといった指標が
費用対効果を判定するために用いられているとのこと。

限られた医療財源を有効活用するためには
効果のないお薬や、費用対効果の少ないお薬は
できるだけ使いたくないですものね。

三宅先生のお話しでは
関節リウマチになった場合には3年以内に25%の人で
10年以内で50%の人で仕事ができなくなってしまうため
発症早期のリウマチ患者さんでは生物学的製剤を早期に使用することで
生物学的製剤の高価な薬剤費を支払っても、
労働損失をすることに比べれば収入としてはメリットがあり
積極的に早期から生物学的製剤を導入しているとのことでした。

また、膝や股関節といった荷重関節にリウマチが発症した場合
関節が壊れることによる障害が大きくなり
経済的なデメリットも大きくなるため
積極的に生物学的製剤を使用するとのことです。

生物学的製剤は高価なお薬ですが、
薬剤費や治療費といった直接医療費だけでなく、
通院のための交通費、介護ベッド、ヘルパーなどの直接非医療費
通院のための休業、労働損失などの間接医療費も考慮して
総医療費を考える必要があり
2005年(まだ生物学的製剤が発売されて間もないころ)でも
リウマチ患者さんの疾病負担は総コスト229万円/年/人
労働損失としては152万円/年/人
だそうです。
現在では生物学的製剤により治療コストはもっと上がっているでしょうね。

日本経済から考えると、
病気になったことにより税金を払えなくなる人が一番多い疾患はうつ病。
2番目は筋骨格系疾患だそうです。

生物学的製剤は目先のコストは高い治療になりますが、
リウマチは仕事のパフォーマンスが下がるだけでなく、
仕事ができなくなる可能性も高い病気です。

最近ではDRUG HOLIDAYの提案もされており、
病勢が強いときには早く、強くリウマチを抑え
寛解に導入できたらしばらくお薬を休んでみる、というのもよいでしょう。

三宅先生は
WTP(Willing to Pay) 支払意思についてもお話しされました。
患者さんが自分の病気をコントロールするために
その薬剤費を喜んで支払ってくれるか。
これまでは関節破壊を防ぐことこそが医療の正しさだとされてきましたが、
経済の中で生活する患者さんが
関節が壊れる可能性を含みながらも生物学的製剤を選択しないというチョイスも
経済学的には支持される選択肢となります。

リウマチ治療にかかわる医療者は
病勢の強いリウマチにより関節が壊れる可能性
それに伴う日常生活ADLの低下や労働損失
についても患者さんに理解をしていただいたうえで
経済的な患者さんの背景を尊重して治療を進めることが大切になります。

この記事の執筆者プロフィール

さいとう整形外科リウマチ科

院長 斎藤究

さいとう整形外科リウマチ科 院長 斉藤究

院長紹介

日本整形外科学会専門医・日本リウマチ学会専門医・日本整形外科超音波学会会員

経歴

1999年

国立浜松医科大学卒 国立国際医療センター 内科研修医

2001年

東京災害医療センター 救命救急レジデント

2002年

刈谷総合病院 整形外科

2006年

名古屋医療センター 整形外科リウマチ科 /
名古屋医療センター 卒後教育研修センター指導医

2010年

Los Angeles Veterans Affairs hospital留学

2011年

さいとう整形外科リウマチ科平和が丘に開院

主な著書

あなたも名医! 運動器エコー 痛みの臨床など6著書(共著含む)

PROFILE

さいとう整形外科リウマチ科 院長 斉藤究

日本整形外科学会専門医日本リウマチ学会専門医日本整形外科超音波学会会員