神経障害性疼痛治療薬「リリカ」副作用の報道
9月17日付の新聞にて、神経障害性疼痛治療薬「リリカ」の
肝機能障害についての副作用が報道されました。
神経障害性疼痛とは
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、手根管症候群など
神経が障害されることによるしびれや痛み全般を指します。
神経障害性疼痛にはこれまで
メチコバールなどのビタミンB12や
ノイロトロピンといった薬剤が主に用いられてきましたが
効果に即効性がなく、鎮痛効果も十分得られませんでした。
(ノイロトロピンは時々よく効く患者さんもいます。)
リリカの登場
リリカは2010年に登場した画期的なお薬で
日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインでも
神経障害性疼痛に対して三環系抗うつ薬と並んで第一選択薬のお薬です。
慢性の肩こりや腰痛にも効果が見られる場合があり
当院でも200人を超える患者様に処方しております。
25㎎1錠、または75㎎1錠から症状を見ながら徐々に増量して
症状の改善が見られる量まで増量しますが
飲み始めや増量時にはふらふら感や眠気を訴える患者様は多くみられます。
逆に、よく眠れてよいとおっしゃる方もいます。
リリカと他の鎮痛薬との比較
今回報道されたものでは
これまで2010年6月に販売を開始されてから200万人近い患者様に使用され
11人の患者さんに肝機能障害や劇症肝炎が見られたとのことでした。
11人/200万人=0.00055%です。
ちなみに、有名な鎮痛薬ロキソニンの消化性潰瘍発生頻度は
添付文書上では0.05%~0.1%未満です。
肝機能障害が発生すると、
だるさや倦怠感が自覚症状として見られる場合があります。
もし心配な場合には、念のために一度採血してみるとよいでしょう。
薬のリスクとベネフィットを考慮する
大切なことは、
どんなお薬にも副作用はあり、
リスクとベネフィットを考えつつ医師と相談して適用を決めることでしょう。
過度に副作用ばかり心配し過ぎることは
かえって病状の悪化を招いたり、痛みのコントロールを難しくしてしまいます。
以下読売新聞より抜粋
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140917-OYT1T50120.html
厚生労働省は、神経障害性の痛みの治療薬「リリカ」(一般名・プレガバリン)を服用した後、劇症肝炎や肝機能障害の重い副作用を発症する症例が確認されたとして、製造販売元のファイザーに対し、二つの副作用への注意を促す記述を薬の添付文書に加えるよう指示した。同省などによると、過去3年間に劇症肝炎や肝機能障害の副作用が確認された患者は計11人。このうち、劇症肝炎で死亡した1人と、肝機能障害の7人については、因果関係が否定できないという。 リリカは、帯状疱疹後の神経痛や線維筋痛症などの治療に用いられる。2010年6月に販売を開始し、使用患者は推計年約195万人。
記事を読んで私は患者として同じことを思いました。
原因不明の神経障害に悩まされていて、「リリカ」
には助けられました。
ただ肝機能障害ももっていて、食道〜十二指腸に、
炎症や潰瘍があるので、今は、ロキソプロフェンを
塗っていますが。
田中さん
医学は万能ではありません。
千差万別の人体に全ての人で効果を保障したり安全を保障できないのが医療の不確実性であり、そこに完全を求めることが現在の医療に対する法律や世論の歪みなんだと思います。
医者は適切なデータをもとに、
医学を利用した時のリスクとベネフィットを限られた時間の中で説明し、患者さんが自分の家族であったらこれをお勧めするだろうという選択肢をオファーします。
しかしその上で、万が一を恐れて、医学という科学を利用しないという選択をするのは患者さん本人に最終決定権があります。
「副作用の無いクスリは無い」
という言い方ですべてをくくってしまう論法を時々見受けますが、これはいささか乱暴な物言いなのではないかと思います。
確かにどんなクスリでも人によっては毒物ともなり得るわけですから。
しかし問題はその毒性が比較的重いか軽いかであって、腰の重い厚労省がわざわざ通達を出すというのは(自己保身にせよ)、その副作用が重い結果を導き出しかねないというおそれがあるからだと思います。
そうでなければ、薬という物がすべて毒物ともなり得るのですから、「あえて副作用情報を載せろ」と通達する必要はないはずだと思いますが、ここで先ほどの
「どんな薬にも副作用の無いものは無いんだから心配しすぎだ」
という論理を持ってきてしまうのは、やはり乱暴だと思うのですが……
池田さん
「どんな薬にも副作用のないものはないんだから心配し過ぎだ」
とは本文には書いておりません。
「大切なことは、どんなお薬にも副作用はあり、
リスクとベネフィットを考えつつ医師と相談して適用を決めることでしょう。」
と書いています。
その病気を治療する薬があるにも関わらず
副作用を心配し過ぎるあまり
必要なお薬を飲むことを拒むために
原病が悪化する患者さんがいます。
リウマチでは関節が溶け、取り返しがつかなくなります。
起こる確率と副作用の重症度、予防策、検査方法など
様々な要因を考慮したうえで
医師は薬の内服をおすすめしますが、
そのお薬を口に入れるか入れないかは
最終的に患者さん次第です。
飲みたくないならば飲まなければよいのです。
但し、医師に隠して内服しないのでは
医師は状況判断ができませんから
飲んでいないのであればそれを正確に医師に伝えなくてはなりません。
そのうえで、医師は次善の策を考えます。
医師は起こりうる副作用を適切に患者さんに説明し
患者さんは副作用の徴候が現れたら速やかに医師に伝える。
その信頼と関係性が構築できるかどうかが大切です。
メディアは起こりうる確率を適切に報道し、
過度の不安をあおるような見出しや
すべての患者にその副作用が起こるような記載の仕方は控えるべきです。
私は、リリカを飲み始めて6年の月日が経地ますが、副作用らしきものは、眩暈と眠気位です。一日の、容量は、八百ミリ迄、処方して頂いて居ります。肝心なところ、痛みには、余り効果無いようです。
霧島さん
コメントありがとうございます。
眠気やふらつき感が出やすいお薬ですので、飲み始めには運転や転倒に気をつける必要があります。
最大容量は1回300mgまでで、朝晩合計600mgになります。
効果がないようであれば漸減してやめても良いかと思います。
いきなりやめてしまうと痛みがリバウンドすることもあるので注意が必要です。
私は軽度の脊柱管狭窄症と診断され、リリカ25mgを1日3回処方されました。
まだ飲みはじめなせいか、眠気があります。
文面からは飲みはじめや増量時に眠気や眩暈といった副作用が出やすい旨が書かれておりますが、
これは使っているうちに治ってくるものなのでしょうか?
ロキュータスさん
リリカは飲み始めに眠気が出やすいお薬なので、最初は夜一回から、翌日運転をしなくていい日に飲むと良いでしょう。
慣れて来たら、朝も飲むようにするといいですよ。
慢性の痛みで眠れない時には、逆に眠気を誘ってくれるので患者さんから眠れて良かったと言われることも多いお薬です。