神経障害性疼痛治療薬「リリカ」の副作用
2014年9月17日付の新聞にて、神経障害性疼痛治療薬「リリカ(一般名:プレガバリン)」の肝機能障害(劇症肝炎・肝機能障害)についての副作用が報道されました。
まず先にお伝えしたいのは、リリカを服用しているすべての方が過度に心配する必要はありません。副作用の可能性を理解した上で、医師と相談しながら適切に使用することが大切です。
当院でもリリカは多くの患者さんに処方しているお薬ですので、今回の報道内容を整理しながら、医師視点の考え方をわかりやすくお伝えしたいと思います。

神経障害性疼痛とは
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、手根管症候群など、神経が障害されることによるしびれや痛み全般を指します。単なる筋肉痛や関節痛とは異なり、「ビリビリする」「焼けるように痛む」「触れると違和感がある」といった症状が特徴です。
これまでの治療薬
神経障害性疼痛に対しては、これまで「メチコバール」などのビタミンB12や、「ノイロトロピン」といった薬剤が主に用いられてきました。
しかし、これらの薬剤は効果に即効性がなく、十分な鎮痛効果も得られないこともありました。(ノイロトロピンは時々よく効く患者さんもいます。)
リリカ(プレガバリン)の登場
リリカは、2010年に登場した画期的なお薬です。
日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインでも、神経障害性疼痛に対して三環系抗うつ薬と並んで第一選択薬とされています。
慢性の肩こりや腰痛にも効果が見られる場合があり、当院でもこれまで200人を超える患者さんに処方しております。
通常は25㎎1錠、または75㎎1錠から開始し、症状の改善が見られる量まで徐々に増量します。飲み始めや増量時にはふらふら感や眠気を訴える患者さんは多くみられますが、逆に「よく眠れてよい」とおっしゃる方もいます。
リリカと他の鎮痛薬との比較
今回報道されたものでは、2010年6月に販売を開始されてから、これまで約195万人ほどの患者さんに使用する中で、11人の患者さんに肝機能障害や劇症肝炎が認められたとのことでした。
単純な割合にすると、
11人/200万人=0.00055%です。
ちなみに、有名な鎮痛薬「ロキソニン」の消化性潰瘍の発生頻度は、添付文書上では0.05%~0.1%未満です。
以下、2014年9月17日の読売新聞より抜粋
厚生労働省は、神経障害性の痛みの治療薬「リリカ」(一般名・プレガバリン)を服用した後、劇症肝炎や肝機能障害の重い副作用を発症する症例が確認されたとして、製造販売元のファイザーに対し、二つの副作用への注意を促す記述を薬の添付文書に加えるよう指示した。同省などによると、過去3年間に劇症肝炎や肝機能障害の副作用が確認された患者は計11人。このうち、劇症肝炎で死亡した1人と、肝機能障害の7人については、因果関係が否定できないという。リリカは、帯状疱疹後の神経痛や線維筋痛症などの治療に用いられる。2010年6月に販売を開始し、使用患者は推計年約195万人。
肝機能障害だと思ったら

心配なときは、医師に相談を
肝機能障害が発生すると、だるさや倦怠感が自覚症状として見られる場合があります。
もし心配な場合には、念のために一度採血してみるとよいでしょう。また、独断で使用を継続せずに、一度医師に相談してください。
注意が必要なケースについて
リリカによる肝機能障害は前述したとおり発症の頻度は低いとされています。ただし、患者さんの状態によっては、より慎重な経過観察が必要な場合もあります。
たとえば下記のような方は、治療前にまず医師に伝え、注意深く治療を進めてください。
- もともと肝臓の病気を指摘されたことがある方
- 複数のお薬を服用している方
- ご高齢の方
薬のリスクとベネフィットを考慮する
過度に副作用ばかり心配し過ぎることは、かえって病状の悪化を招いたり、痛みのコントロールを難しくしてしまいます。
どんなお薬にも副作用はあります。リスクとベネフィットを考慮しながら使うことが大切です。
当院では、患者さん一人ひとりの症状や生活背景を考慮しながら、無理のない治療を心がけています。痛みがなかなか治らない、薬に対する不安があるという方は、当院に一度ご相談ください。


記事を読んで私は患者として同じことを思いました。
原因不明の神経障害に悩まされていて、「リリカ」
には助けられました。
ただ肝機能障害ももっていて、食道〜十二指腸に、
炎症や潰瘍があるので、今は、ロキソプロフェンを
塗っていますが。
田中さん
医学は万能ではありません。
千差万別の人体に全ての人で効果を保障したり安全を保障できないのが医療の不確実性であり、そこに完全を求めることが現在の医療に対する法律や世論の歪みなんだと思います。
医者は適切なデータをもとに、
医学を利用した時のリスクとベネフィットを限られた時間の中で説明し、患者さんが自分の家族であったらこれをお勧めするだろうという選択肢をオファーします。
しかしその上で、万が一を恐れて、医学という科学を利用しないという選択をするのは患者さん本人に最終決定権があります。
「副作用の無いクスリは無い」
という言い方ですべてをくくってしまう論法を時々見受けますが、これはいささか乱暴な物言いなのではないかと思います。
確かにどんなクスリでも人によっては毒物ともなり得るわけですから。
しかし問題はその毒性が比較的重いか軽いかであって、腰の重い厚労省がわざわざ通達を出すというのは(自己保身にせよ)、その副作用が重い結果を導き出しかねないというおそれがあるからだと思います。
そうでなければ、薬という物がすべて毒物ともなり得るのですから、「あえて副作用情報を載せろ」と通達する必要はないはずだと思いますが、ここで先ほどの
「どんな薬にも副作用の無いものは無いんだから心配しすぎだ」
という論理を持ってきてしまうのは、やはり乱暴だと思うのですが……
池田さん
「どんな薬にも副作用のないものはないんだから心配し過ぎだ」
とは本文には書いておりません。
「大切なことは、どんなお薬にも副作用はあり、
リスクとベネフィットを考えつつ医師と相談して適用を決めることでしょう。」
と書いています。
その病気を治療する薬があるにも関わらず
副作用を心配し過ぎるあまり
必要なお薬を飲むことを拒むために
原病が悪化する患者さんがいます。
リウマチでは関節が溶け、取り返しがつかなくなります。
起こる確率と副作用の重症度、予防策、検査方法など
様々な要因を考慮したうえで
医師は薬の内服をおすすめしますが、
そのお薬を口に入れるか入れないかは
最終的に患者さん次第です。
飲みたくないならば飲まなければよいのです。
但し、医師に隠して内服しないのでは
医師は状況判断ができませんから
飲んでいないのであればそれを正確に医師に伝えなくてはなりません。
そのうえで、医師は次善の策を考えます。
医師は起こりうる副作用を適切に患者さんに説明し
患者さんは副作用の徴候が現れたら速やかに医師に伝える。
その信頼と関係性が構築できるかどうかが大切です。
メディアは起こりうる確率を適切に報道し、
過度の不安をあおるような見出しや
すべての患者にその副作用が起こるような記載の仕方は控えるべきです。