関節リウマチ治療薬として、2剤目のJAK阻害薬であるオルミエント(baricitinib)が発売されてから1年。
日本人における有効性や安全性、適正使用についての講演会があり、当院のリウマチナースである小島さんと一緒に参加してきました。
土曜日はお手伝いの先生のおかげもあり、何とか2時の新幹線に間に合いました。
それにしても、東京駅のタクシー待ちの列はすごい。並んでから乗るまで19分でした( ;∀;)
オルミエントの有効性 日本人の治験結果を総括する。
産業医科大学 田中良哉先生
生物学的製剤はとても分子量が大きい。
アスピリンと同じくらいの小さな分子量のJAK阻害薬オルミエントは経口内服で効果を発揮し、細胞内に入り込んでJAK1、JAK2を選択的に阻害して濃度依存的に効果を発揮する。
RA-BEAM試験 プラセボ、BARI、ADAそれぞれ使用後にBARI4㎎にswitch。NEJMに掲載。
SDAI40前後の疾患活動性の高いpopulationが対象。
12週 ACR20 PBO 40.2% BARI 69.6% ADA 61.2%
12週 日本人 ACR20 BARI 66.7% ADA60.3%
ACR70 40%
PBOに対して投与1wで圧痛腫脹関節軽減。速やかな効果発現。
CRPも1wから1.0以上低下。
疲労、疼痛、朝のこわばりなど自覚症状の改善も1w目から速やか。
労働生産性の改善も12wにおいてADAと同様の成績。
関節破壊抑制効果は2年間でADAと同等。最初はMTXを併用したほうがより効果が高い。Monoでは弱くなる。
2年後の関節破壊抑制効果からは、2㎎ではPBOと有意差なし。4㎎ではPBOと有意差。
4㎎を使用すべき。
University Medicine Berlin
Rieke Alten先生
Real World Experience in Germany
Bari4mg+MTXでLDAまたは寛解を維持できた患者では、Bari2mgにdose downしても維持できた。
東京上肢医科大学膠原病リウマチ内科
針谷正祥先生
オルミエントの安全性と適正使用
現在平均罹病期間12年の患者に使用されている傾向。
登録時のMTX投与量 平均 8.6mg 中央値 8.0㎎ 2~20㎎
ステロイド投与なし 半数
結核検査、腎機能検査、肝炎ウイルス検査は90%以上で行われていた。
2018年7月までの副作用発現状況
1171例 重篤1.7%22件 感染症 12例 呼吸器系 4例 腎尿路障害2例など
皮膚 重篤3 播種性帯状疱疹1例 帯状疱疹1例
非重篤21 帯状疱疹他
呼吸器 重篤 肺炎 6 肺結核 1
口腔ヘルペス 非重篤3例
重篤な肺炎症例の特徴
70代4例 60代1例
投与後10日~41日
6例中3例に喘息、肺線維症、結核・胸部異常陰影などの呼吸器合併症
悪性腫瘍(因果関係不明) 3例/1171例
検査値の推移
リンパ球数 横ばい
EPO 容量依存的にEPO上昇 網状赤血球 一度下がって上昇してくる。
鉄代謝改善(炎症の改善による)
好中球数 投与初期に低下し、横這い
Hb 投与初期に低下し、ベースラインに復帰(治験時の採血量が多いことも関与?)
血小板数 投与2週後にピークに達し、ベースラインに復帰
肝酵素、CK、HDL,LDL、Cre 上昇(JAK阻害薬2剤に共通)
日本のRA患者は非RA患者よりも1.7倍帯状疱疹にかかりやすい。
ステロイド5㎎以上の使用は帯状疱疹のリスクを高める。
100人年で3.5件(global) 日本人では6.5件
PMSではリンパ節結核1例、肺結核1例の報告/登録1200件
10万人に換算するとTNFと同じくらいのリスク。