電話によるお問い合わせ

営業時間 8:30~11:30 / 15:30~18:00
休診日:水曜日午後・土曜日午後・日曜日・祝日

電話をかける

blog

ヒュミラ5周年記念講演会

ヒュミラ5周年記念講演会

今日は品川にて生物学的製剤ヒュミラの5周年記念講演会がありました。
土曜日の外来診療が終わってから、新幹線に飛び乗ってきました。

7種類の生物学的製剤が揃い、
Treat to Targetのスローガンのもとに
リウマチ患者さんの治療目標が「寛解」であることが
当たり前となった今、
より深くリウマチ患者さんの生活の質の向上を目標とした
とても良い内容の講演会でした。
少し長い文章になりますが、お時間のある時に読んでください。

聖路加国際病院の岸本先生からは
医師、看護師がよりよく患者さんを納得して治療に導く
コミュニケーションスキルについてのお話がありました。

2013EULAR(ヨーロッパリウマチ学会)では
Treat to Targetの目標の1番目には、
「治療目標は最高の結果を求めて、
 患者と医師の双方の合意のもとで決定するべき」
と改訂されました。(2010年T2Tでは2番目でした)

私たちがせっかくよいお薬を使えるとしても、
患者さんは必要以上に副作用を心配したり、
薬を使わずに治った、というような知り合いの話を重視する場合もあります。

その際にいかに適切に、患者さんの納得のいく形で
情報を提供するか、というお話でした。

医師が思う以上に、言われたとおりにしっかりと抗リウマチ薬を内服している
患者さんは少なく、MTXで平均63%だそうです(@_@;)
お薬を8割方ちゃんと飲んだ患者さんでは疾患のコントロールとともに
関節破壊も防げているのですが、
お薬を8割以下しかちゃんと飲んでいなければ、
関節は壊れていくとのデータも示されました。
(お薬、ちゃんと飲んでくださいね、、、(ToT)/~~~)

そこで、T2T CONNECTという活動では
・治療が不十分でRAが進行するリスクの理解
・自己モニタリングすることの重要性の理解
・医師と患者の期待を合わせること
・治療プランの受け入れを円滑にすること
・患者さんのコンプライアンス(治療方法をちゃんと守ること)と、
 その持続性の改善
を目標としています。

そのためには、患者さん自らがより良い将来を思い描き
それを達成しようとするための動機づけをするよう
医療者がアプローチすることが大切
との岸本先生のご講演でした。

また、慶応義塾大学の竹内 勤先生からは
日本で初めてのリウマチ患者さんの労働生産性への影響についての研究
NOUVEAUの24週の結果について報告されました。
当院でも患者さんにご協力いただいているstudyでもあり、
とても興味深く拝聴しました。

2010年のリウマチ白書によると
8307人のリウマチ患者さんのうち
3430人が仕事に影響があったと回答しており、
そのうち60%がリウマチのために休職、退職、廃業していました。

リウマチは関節が変形しますが、
その中でも骨に穴が空くerosionよりも
関節の隙間が狭くなるjoint space narrowingのほうが
仕事に悪影響があったとの研究があります。

海外のPROWD試験からは、
148人のリウマチ患者さんが2年間に離職、または離職寸前になった割合は
MTXとプラセボを使用した患者さんでは39.7%
MTXとヒュミラを使用した患者さんでは18.7%
でした。
特にその差は開始から3か月で開くことも示され、
早期に生物学的製剤を導入することで
仕事を続けられることがわかります。

また、欠勤(Absennteeism)に至らなくても
出勤はしているが、労働生産性の落ちる(Presenteeism)患者さんに
焦点を当てて治療目標を立てることも大切とのお話がありました。

仕事を続けられるということは、
社会的にも自分の役割をもって、楽しく生きることにもつながりますからね。
アイデンティティーにもかかわる重要な問題です。

Nouveau試験では
160人の週35時間以上勤務者と、352人の35時間以下の勤務者
で比較検討されましたが、
リウマチの疾患活動性DAS28が高いほど、
労働生産性も落ちることがdataとして示されました。
また、ヒュミラにより治療12週目には
労働生産性が大きく改善されることも示されました。
(リウマチによる労働生産性の低下した人の割合 40%弱→20%強)

当たり前かもしれませんが、
EVIDENCEのあるDATAとしてこのことが示されたことで
医療者がこの点を考慮して治療を行う重要性が
強調された意味は大きいと思います。

いつも私も患者さんにお話しするのですが、
スポーツや仕事を思う存分やっても
リウマチという病気が顔を出さないレベルの
深い寛解を得るように
しっかりと治療することが大切ですね。

最後に、産業医科大学の田中先生より
寛解と休薬についてのお話がありました。

CONCERTOstudyからは
ヒュミラとMTX2.5mgを併用した場合に、
24週(6か月)後にDAS28CRP寛解に至った割合は42.9%
MTX10㎎だと57.6%
MTX20㎎だと60.2%でした。
日本では現在MTX16㎎までの使用が認可されていますね。
MTXを十分に内服することはとても重要なのです。

発症2年以内のRA患者さんを対象としたHOPEFULstydyでは
DAS28ESR寛解は
MTX+プラセボ 26週 14.7%
MTX+ヒュミラ 26週 31.0% 52週 37.7%
でした。
MTX+プラセボに26週目からヒュミラを追加すると
52週目においてDAS28ESR寛解は37.4%と追いつきますが、
疾患活動性としてのDAS28ESRは改善しても
26週までに壊れてしまった関節があるために
HAQ(日常生活の評価)は下がってしまったままでした。
関節破壊がなかった割合(ΔTSS<0.5)は
MTX+プラセボ 26週 41.3% 52週 44.4%(壊れたものは改善しない)
MTX+ヒュミラ 26週 74.3% 52週 66.9%

つまり、ヒュミラを早くから使えば関節は壊れにくい。
あとから使ってもリウマチの活動性は同じように落ち着くものの
それまでの時間に壊れてしまった関節は取り戻せない
ということです。

HARMONY-Ⅲstudyでは
これまで生物学的製剤を使ったことのない患者さん(BIO-naive)で
MTXを8㎎以上使用していれば、
81%の患者さんが1年間、72%で3年間ヒュミラを安定して使用できたとのことです。
そして3年目には
DAS28ESR寛解53%、DAS28CRP寛解79%、SDAI&CDAI寛解63%
と、半分以上の患者さんが寛解まで至ったとのことです。

そしてリウマチ歴7年以上の人でも
DAS282.6の寛解状態が半年間続いたときにヒュミラを中止した51人のうち
1年後に評価できた47人の患者さんの内訳は、
1年後もDAS寛解維持 38% 低疾患活動性(LDA)19% 再燃43%
SDAI寛解49% SDAI-LDA19% 
だったそうです。

もちろん、ヒュミラを中止しなければ寛解を維持する割合は高く
中止した人の中には関節破壊が進行した患者さんもいるわけで
続けられるならばそのほうが安全とのことです。

再燃した患者さんではほとんどの人がヒュミラを再開することで
再度LDA低疾患活動性~寛解に戻っており、
寛解を継続した後にBIO-FREEとしてみるという
TREATMENT-HOLIDAYの可能性が示唆されました。

では、どのような患者さんが休薬から1年間寛解を維持できたかというと
DAS28<1.66という、深い寛解DEEP REMISSIONにあった患者さんだそうです。

カットオフポイントDAS28<1.98では
1年後も68%が寛解、79%が低疾患活動性以下であり
深い寛解DEEP REMISSIONの治療目標として示されました。

そして、近い将来にはリウマチ因子RFが正常値となり、DRUG-FREEが達成できる
immunological remission(免疫学的寛解)
が治療目標となるのではないか、
とお話しを締めくくられました。

現在のTreat to Target時代における講演会として
リウマチという病気を抱えた患者さんの
病気だけでなく、生活全体を改善するという、
とてもよい内容の講演会でした。

、、、
とても盛りだくさんな内容で、
このreviewを作るのに2時間かかってしまいました、、、(+o+)
来週の学会発表作らねば、、、(ToT)

この記事の執筆者プロフィール

さいとう整形外科リウマチ科

院長 斎藤究

さいとう整形外科リウマチ科 院長 斉藤究

院長紹介

日本整形外科学会専門医・日本リウマチ学会専門医・日本整形外科超音波学会会員

経歴

1999年

国立浜松医科大学卒 国立国際医療センター 内科研修医

2001年

東京災害医療センター 救命救急レジデント

2002年

刈谷総合病院 整形外科

2006年

名古屋医療センター 整形外科リウマチ科 /
名古屋医療センター 卒後教育研修センター指導医

2010年

Los Angeles Veterans Affairs hospital留学

2011年

さいとう整形外科リウマチ科平和が丘に開院

主な著書

あなたも名医! 運動器エコー 痛みの臨床など6著書(共著含む)

PROFILE

さいとう整形外科リウマチ科 院長 斉藤究

日本整形外科学会専門医日本リウマチ学会専門医日本整形外科超音波学会会員