今年のリウマチ学会が終わりました。
昨年に引き続き今年も、
超音波を中心とした画像診断
リウマチの痛みの診断と治療
経口内服薬の併用による治療効果
リウマチと鑑別を要する疾患(特に乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、リウマチ性多発筋痛症)
に注目して3日間聴講してきました。
MMP-3
リウマチの大切な検査項目である、MMP-3は
軟骨障害と関連しており、MMP-3が高値の場合には関節裂隙の狭小化がリスクとなる。
軟骨が溶かされることによる関節裂隙の狭小化(Joint Space Narrowing)は、骨に穴が開くBone Erosionよりも関節の動きが悪くなるため、MMP-3が下がるようにリウマチをコントロールすることが必要。
MMP-3はリウマチの早期から上昇しているが、PSLの使用、腎障害、SLE、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、乾癬性関節炎(PsA)、反応性関節炎、結晶性関節炎などでも上昇するため、リウマチに特徴的な検査ではない。
リウマチの画像診断
症状は寛解していてもレントゲン上の変化が進行する症例があり、Carry Over Effectと呼ばれる。
全身MRIでは発症6か月以内の早期RAでも、35%に頸椎環軸関節の滑膜炎が認められており、頸椎のレントゲン検査は初診時に行っておく必要がありますね。
ガイドラインでは年に1回のレントゲン検査が推奨されていますが、特に治療初期や再燃時には3~6か月に1回レントゲン検査をしたほうがよいかもしれませんね。
もちろん、関節の触診所見だけでは不十分で、触診では検知できない関節超音波でわかる残存滑膜炎もありますので、痛みや腫れが残っている関節では関節超音波を施行してエコー寛解を目指すべきでしょう。
残存滑膜炎(residual synovitis)はリウマチ再燃のリスクになります。
残存滑膜炎の残っている寛解は、instable remissionとも呼ばれていました。
また、HOPEFUL STUDYでは早期に寛解導入してBIO休薬した後も、構造的寛解が維持されています。
もちろん、再燃した場合は別ですが、安定して寛解が維持できているならBIOの休薬にtryする価値はあります。
超音波セッションでは、乾癬性関節炎のまとまった超音波画像が提示されており、勉強になりました。
触診では付着部炎ありと検知したものは26人中10人 38.5%ですが、超音波では18人69.2%に認めたとのこと。
リウマチの関節と同じで、超音波でしか検知できない付着部炎もあるのでしょうね。
今後、超音波でしか検知できない付着部炎の病的意義が検討されていく必要があるでしょう。
また、乾癬性関節炎では、関節内の滑膜炎ではなく、皮下組織の炎症がある場合もあり、エコーで鑑別が可能という発表がありました。
治療前のMRIで骨炎を認めた関節に超音波上の残存滑膜炎が残りやすいとの発表もありました。
また、40関節(DAS28関節+足関節+足趾MTP関節)の評価では、PDUSスコアが3点以上で生物学的製剤中止後6か月以内に再燃しやすいとのレビューもありましたが、やはり超音波検査で滑膜炎が残っている時に治療薬を弱めてしまうことは再燃のリスクになるということですね。
治療薬
イグラチモド
MTXと併用することでとても有効なイグラチモド(IGU)(コルベット、ケアラム)ですが、MTXと併用しなくても同様に有効であるとの発表もありましたが、市販後全例調査の結果としてはMTXと併用するほうが効果が高いとのことでした。
リウマチ自体がTNFαが非常に効果のある群、IL-6が効果的な群、それでもだめな群など、単一の疾患ではなく、多様性のある疾患概念であり、heterogeneityと称されていました。そのため、MTXのようなmultiple targetsの治療薬が有効であり、異なる作用機序を持つ治療薬の併用が合理的な治療戦略になるとのことでした。生物学的製剤使用前はもちろん、治療開始時からMTXとIGUを併用することもよいのではないか、と発表されていました。面白いですね。
イグラチモドでは、肝障害の他に、間質性肺炎にも注意して使用することが必要です。報告された間質性肺炎の63%は16週以内に、79.6%は24週以内に発生していたとのことです。
リウマチの鑑別疾患としては
ポスター発表では閉経期エストロゲンの低下に伴う更年期障害の部分症としての関節痛と、乳がん治療のためのアロマターゼ阻害薬使用に伴う同様の関節痛が報告されていました。
これは当院でも日常の診療で頻繁に出会うため、鑑別としてはとても大切なのですが、あまりこれまで声高には言われていませんね。
当たり前すぎるのでしょうか。でも、みなさん困っているところなので、とてもいい発表です。
触診でも腫れていないため、鑑別は可能ですが、痛みの原因として患者さんに説明してあげると安心されます。その際、産婦人科で女性ホルモンを測定し、ホルモン補充療法を行うことで関節痛は消失します。
診断についてのポスター発表では
診断のための抗ガラクトース欠損IgG(CARF)は今はあまり測定することはありませんが、これについての測定意義は今ではもうない、との発表もあり、面白かったです。当院では、抗核抗体高値の時に測定すると、これが引っかかることがあります。
また、健康診断で関節症状のない患者さんにRFを測定する有用性は低いとの発表もありました。確かに健康診断でリウマチ因子が陽性だったと来院される患者さんもよく見られますが、ほかになにも症状がない時には、念のため関節の触診だけ行い、「体質としてはリウマチを持っている可能性があるので、今後痛みや腫れが出現したら早期に受診してください。」とお伝えして終わることが多いですね。家族にリウマチの方がいる場合には、詳しい検査を行うこともあります。
今はリウマチ学会からの帰りの新幹線でこれを書いています。
そろそろ名古屋に着くな、、、。
続く!