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骨粗鬆症の治療薬│ビスフォスフォネート製剤の効果
現在、骨粗鬆症治療薬にはさまざまなお薬が使用されていますが、その中でも現在多くの人がその恩恵を受けているのが「ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)」です。
ビスフォスフォネート製剤のなかでは、週一回内服する製剤が主流ですが、最近では飲み忘れの改善や胃腸などを守るために、月に一回内服すれば同等の効果が得られるものもあります。
週一回内服する製剤
- ボナロン
- ベネット
- アクトネル
月に一回内服する製剤
- ボノテオ
- リカルボン
骨は通常、作る細胞「骨芽細胞」と壊す細胞「破骨細胞」の働きで作っては壊し、壊しては作られることで骨の新陳代謝がはかられ、ミクロな骨の損傷ならば知らない間に修復されます。(micro fracture)
しかし破骨細胞が働きが強くなると、骨を壊すバランスに傾きすぎて骨密度が低下し、骨粗鬆症が進む原因となります。
その際に、ビスフォスフォネート製剤を用いて破骨細胞の働きを抑えることで、骨密度を上昇させ、骨を強くしてくれます。また、圧迫骨折などに伴う骨の痛みにも効果があるといわれています。
ビスフォスフォネート製剤の副作用
顎骨壊死
ビスフォスフォネート製剤を使用する際に、関連のある副作用として注目されているのが「顎骨壊死(がっこつえし)」です。
顎骨壊死とは、歯周病や口腔内の感染、小さな傷をきっかけに顎の骨に炎症が生じて、最終的に骨が露出してしまうことを言い、以下のような症状が現れます。
顎骨壊死でよくみられる症状
- 痛み
- 腫れ
- 膿が出る
- 歯のぐらつき
- 下くちびるのしびれ
こういった副作用はまれではありますが、さいとう整形外科リウマチ科では顎骨壊死のリスクがある治療薬を使用する前に、歯科検診を受けているか問診して、歯周病が無いことが確認できない場合にはまず歯科に受診してもらっています。
非定型骨折(大腿骨転子下骨折・大腿骨骨幹部骨折)
最近、顎骨壊死と並んで話題となっているのが「非定型骨折」と呼ばれる、高齢者の大腿骨転子下骨折や、大腿骨骨幹部骨折です。
これらは通常、転倒などの軽微なエネルギーでは起こりませんが、ビスフォスフォネート製剤の長期内服との関連も指摘されています。
ともあれ、骨粗鬆症の患者さんにとっては、骨密度を低いまま放置することの方が他の骨折のリスクは高いです。ビスフォスフォネート製剤を内服する恩恵のほうが、ごく頻度の少ない非定型骨折を心配するよりもはるかに大きいため、大切なお薬であることには変わりありません。
早期発見のポイント
非定型骨折の対策として大切なことは、非定型骨折というものが起こり得ることを認識し、骨折する前に早期に対処することです。
注意点としては、骨折の前駆症状として大腿骨の痛みや骨皮質の肥厚が見られ、また両側性に発生することも指摘されています。
また、ビスフォスフォネート製剤を長期間内服しており、なおかつ股関節や太ももの痛みがある場合には、痛い場所だけではなく一度大腿骨全体のレントゲンを撮ることも早期発見の手助けとなる可能性があります。
骨粗鬆症治療薬の効果は定期的な検査で確認
骨粗鬆症の治療薬は、飲み始めてすぐに効果が実感できるわけではありません。
そのため当院では、治療の状況を正しく把握するために、いくつかの検査を組み合わせて経過観察をしています。
DEXA法│腰椎・大腿骨の骨密度検査
骨粗鬆症ガイドラインでも基準となっている、DEXA法による腰椎・大腿骨の骨密度測定を行います。名古屋市にお住まいの方は、45歳から5歳ごとに送られる骨密度検査クーポン券をご持参いただくと、無料で検査が受けられます。
腰椎・大腿骨骨折のリスクはこちらでも紹介しています。
採血│骨代謝マーカーと栄養分析
骨は、壊す(骨吸収)と作る(骨形成)を絶えず繰り返しています。その働きを数字として表したものを骨代謝マーカーといい、血液検査で測定できます。
今の薬が効いているか、薬を変えたほうがいいかなど、今後の治療方針の判断に役立ちます。保険では初回・治療効果判定時の2回測定することができ、薬剤変更時にも測定することができます。
また、骨に大切なビタミンDやタンパク質をちゃんと摂れているか栄養状態を確認し、不足があれば今後取り入れたほうがいい食材のアドバイスをします。
薬と定期検査で骨粗鬆症治療をサポート
ビスフォスフォネート製剤は、骨粗鬆症治療の中心となるお薬です。治療のメリットは大きく、骨密度の改善や骨折リスクの低下が期待できます。
また、まれに顎骨壊死や非定型骨折といった副作用がみられることもありますが、適切な経過観察と検査を行うことで、ほとんどの場合は安全に治療を続けることができます。
骨粗鬆症をそのままにしておくと、大腿骨の骨折などに繋がり、自力で立ち上がることが困難になったり、入院やリハビリが必要になるケースも珍しくありません。
骨折してしまう前に、まずは骨粗鬆症の検診・治療を始めてみませんか?
「年齢的に気になり始めた」「最近つまずきやすくなった」と思う方には、一度検診を受けてみることをおすすめします。





骨密度が高ければ非定型骨折は起きないのでしょうか?股関節や太ももの痛みは、常時痛いのですか?
Tibisyukeさん
よいご質問ありがとうございます。
骨密度が高くても起こるのが非定型骨折です。
もともとは骨密度が低いのでビスフォスフォネートを
内服した経緯もありますが、
逆説的に骨密度が上がってきても微小骨折の修復過程に影響して、
ダメージが蓄積することで骨折に至ると言われます。
ただ、頻度はとても少なく、詳しいことはまだわかっていません。
ありがとうございます。
痛みにも微妙な違いがあり、自分の痛みが
非定型骨折が原因の股関節や太ももの痛みか?
腰痛等が原因の股関節や太ももの痛みか?
迷っているうちに手遅れになる危険も有りますね。
tibisyukeさん
非定型骨折は頻度が10万人に一人程度と非常に少ないと言われています。
痛みがあったら、とりあえずお薬をもらっているDrに相談、というのが一番ですね。