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ステロイドと骨粗鬆症と顎骨壊死

ステロイドと骨粗鬆症と顎骨壊死

今日は名古屋でリウマチの勉強会。

僕は京都府立医科大学教授の川人先生のご講演で座長のお仕事をしてきました。

その後、リウマチでも使われることのあるステロイド薬と骨粗鬆症の関係、ビスフォスフォネート(ボノテオなど)やデノスマブ(プラリア)などの骨吸収促進薬と顎骨壊死についてです。

今日はそのまとめをこちらに記載しておきます。

要約すると、ステロイドは1mgでも骨粗鬆症のリスクがある。(できるだけ使わないほうが良いが、病状コントロールが不良な場合にはどうしても使わなくてはいけない場合もある。)

骨吸収促進薬を使用する前に、できるだけ歯科治療を終えておくことが望ましいが、骨折リスクの高い重症骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移予防のためには速やかに治療導入すべき。

宗圓先生は、必要で投薬していた骨吸収促進薬を歯科の先生が中止してしまい、その結果悪性腫瘍の骨転移が進行した患者さんのお話もされていました。

また、骨粗鬆症の診断と治療効果判定のためにはDEXA(腰椎と大腿骨)の骨密度検査をするべきで、手関節や踵の骨は参考値として扱い、効果判定に用いるのは避けたほうがよいです。治療効果判定はDEXAで行いましょう。

歯科治療前に歯科の先生が顎骨壊死のリスクを伝えて骨吸収促進薬をやめさせてしまうこともありますが、顎骨壊死のリスクは休薬により変わることはないことがポジションペーパーにも記載されました。骨折リスクの増加を考えると、休薬はしないで歯科治療を受ければ良いとのことです。

むしろ、歯科治療前の抗生剤投与のほうが顎骨壊死のリスク軽減には必要なようです。

以下今日のお話の箇条書きです。

 

宗圓先生のご講演

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症GIOのガイドラインと顎骨壊死ポジションぺーパー改訂について

ステロイドの副作用は骨折の頻度が高い。
大腿骨頚部骨折のリスクが上がる因子
ステロイド投与3ヶ月以上の使用歴
親の大腿骨頚部骨折既往
関節リウマチ
など
ステロイドは骨形成が低下する期間が長い
7.5mg以上のステロイド投与は1週間で骨吸収が促進してしまう。
妊娠後やリウマチ、閉経後の骨粗鬆症では骨梁構造の重力ラインの縦方向は残る。
ステロイド骨粗鬆症では骨梁構造の縦も横も弱くなるため骨折しやすい。骨密度が高くても骨折を起こす。
骨折リスクは投与後3〜6ヶ月でピーク。ACR:3ヶ月以上投与する可能性があれば骨粗鬆症治療を導入しておく。
ビスフォスフォネートで骨折リスクは半減する。
ステロイド2.5mg/日以下の投与でも椎体骨折は1.55倍になる
7.5mg以上では5倍以上になる。
非椎体骨折でも少量の投与でも骨折リスクは上がる。
たとえ1mgでも骨折リスクは上がる。
投与を中止すると3ヶ月で骨密度は上がるが、1〜2年は骨折リスクは高いまま。
ガイドライン2014
既存骨折、65歳以上、ステロイド7.5mg以上、腰椎骨密度YAM70未満では、ステロイド3ヶ月以上使用するならビスフォスフォネートを併用すべき。
→2023 腰椎・大腿骨どちらか70%以下となった。
テラパラチド、デノスマブは椎体骨折抑制効果が高い。
骨吸収抑制薬治療開始の2週間前までにすべての歯科治療を終えておくことが望ましい。
骨折リスクが高い場合や、がんの骨転移抑制のための骨吸収抑制薬治療は速やかに開始し、歯科治療を並行して進める。
国内後ろ向き試験
顎骨壊死はビスフォスフォネート休薬の有無と関連しなかった。
H30 休薬によって顎骨壊死の発生率が下がるエビデンスはない。低容量のデノスマブでは休薬はすべきではない。
2018 前向き研究
ビスフォスフォネート投与中の132例
休薬なしで術前から抗生剤投与
274歯抜歯
顎骨壊死発生しなかった。
顎骨壊死発生例に対する休薬で治癒が改善することもない。
ポジションペーパー2023
抜歯時は休薬しない。
骨吸収促進薬の治療前に歯科治療を終えておくことが望ましい。

PROFILE

さいとう整形外科リウマチ科 院長 斉藤究

日本整形外科学会専門医日本リウマチ学会専門医日本整形外科超音波学会会員