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骨折の原因の多くは「転倒」
骨折の原因の80%~90%は「転倒」によるものです。
若い世代では、転んだ時に手をついて受け身を取れるため、手首の骨折である橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)がよく見られます。
一方で、転んだ時にとっさに反応できなくなってきて、肩や臀部を直接ぶつけるようになると、上腕骨や大腿骨の骨折が増えてくると言えます。
特に高齢の方は、骨だけでなく筋肉量も低下する「サルコペニア」が進みやすくなり、転倒のリスクがさらに高まります。
骨粗鬆症に伴う大腿骨・手首・上腕の骨折
図は「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド」から引用したもので、骨粗鬆症に伴う四肢の3大骨折について、年齢別の発生率を表したものです。
3大骨折とは以下の症状を指します。
- 大腿骨近位部骨折(大腿骨の股関節の付け根)
- 橈骨遠位端骨折(手首)
- 上腕骨近位端骨折(上腕骨の肩の付け根)
女性ホルモンの減少による骨密度の低下
また、閉経を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、破骨細胞の骨を壊す働きが強まることで、骨密度が急激に下がってしまいます。
閉経を迎えた女性は、血圧や血糖値同様、自分の骨密度は必ず知っておくべきでしょう。
骨折部位ごとの治療方法
上腕と手首の骨折
骨折のずれが大きい場合は入院・手術が必要となりますが、ずれが少なければギプス固定などで治療することができます。いずれにせよ、骨が固まって普通に使えるようになるには、早くても2か月間程度かかります。
大腿骨の骨折
大腿骨の骨折をすれば、基本的に手術が必要になることが多いです。
特に高齢の方で多く、合併症のため手術ができない場合もあります。その際は歩行レベルが大幅に下がり、車いす生活や寝たきりとなることもあります。
大腿骨の骨折をすると自力で立てなくなることがほとんどで、早く手術をしないと筋力低下、肺炎、深部静脈血栓症などの合併症を招くリスクが高まります。
そのため、どこの救急病院の整形外科も、若手の先生は毎日のように大腿骨頚部骨折の手術に追われています。
術後の経過│リハビリと転院
手術後は2週間ほどかけて立って歩く練習をします。
ただ、現在は急性期の病院で「しっかり歩いて自宅に帰るまで」の長い期間にわたるリハビリを行えなくなってきました。これは病院の分業制といえますが、国の方針でもあります。
そのため、入院当初から転院リハビリのお話があります。そして、術後は転院した先の病院で自宅復帰レベルになるまで歩行訓練を行うことになります。
次の骨折・骨粗鬆症を予防するために
骨粗鬆症からくる骨折を起こすということは、それだけ骨密度が下がっているか、同時に骨の質も低下しているというサインですので、また別の骨折を起こすリスクが非常に高くなります。
そのため骨折後はもちろん、できれば日常的に運動・栄養バランスに気を遣って骨折前から骨密度や骨質を高める、骨粗鬆症の治療をしっかりとする必要があります。
栄養バランスと生活習慣
骨密度や骨質を高めるためには、毎日の食事や生活習慣を整えることがとても大切です。
骨は常に「壊されては作られる」という代謝を繰り返しています。
そのため、骨の材料になる栄養素(カルシウム・ビタミンD・たんぱく質)をバランスよく摂り、筋力を維持することで、転倒や骨折のリスクを減らすことができます。
骨粗鬆症の治療薬
食事や運動で骨を守ることは大切ですが、それだけでは十分に骨量を回復できない場合もあります。その際に力を発揮するのが、医師のもとで行う骨粗鬆症の薬物療法です。
現在は、骨の吸収を抑える薬「ビスフォスフォネート製剤」や、骨の形成を促す薬、骨の代謝を整える注射薬など、症状の重さや体質に合わせたいろんな治療薬がそろってきました。
これらの薬を正しく継続することで、骨密度の改善と再骨折の予防効果が期待できます。
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骨密度の測定は骨粗鬆症治療に役立ちます
骨粗鬆症のガイドラインでは、腰椎と大腿骨の骨密度を指標として骨粗鬆症治療を行うことを推奨しており、それらは寝たきりの原因となるとても大切な部分です。
さいとう整形外科リウマチ科では、大きな病院レベルと同じ腰椎・大腿骨骨密度測定器を用いて、骨粗鬆症の検診・治療を行っています。
「名東区から、転倒して骨折する人をなくす!」
不可能かもしれませんが、大きな大きな目標です。
骨折を予防して将来もずっと元気に歩くために。まずは一度、骨密度検診を受けてみませんか?





