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骨粗鬆症についての講演で学んだこと
今日は船橋総合病院 金谷幸一先生の骨粗鬆症についてのご講演を聴きました。
今回の記事では、フォルテオやテリボンの使い方と骨密度について触れながら、講演で学んだ内容をまとめます。
フォルテオ・テリボンについて
フォルテオとテリボンの違い
◆ フォルテオ(遺伝子組換えテリパラチド)
剤形・投与方法:自己注射(ペン型注射器)、1日1回投与
用量:1回20μg
治療期間の上限:24ヵ月間
特徴:十分な教育訓練と医師の管理指導のもと、自宅で自己注射するタイプ
ペン型で比較的操作が簡単
◆ テリボン(テリパラチド酢酸塩)
剤形・投与方法:医療機関での週1回注射(皮下注射)
用量:56.5μg
治療期間の上限:24ヵ月間
特徴:週1回の通院
医療機関での投与なので、一般的に自己注射が難しい高齢者に向いている
フォルテオ・テリボンを使うタイミング
金谷先生は、新しい骨形成促進薬テリパラチド(フォルテオやテリボン)を投与するタイミングとして
・椎体骨折の経過中に新規骨折を発症
・遷延治癒(9ヶ月しても骨癒合せず、3ヶ月経過観察しても骨癒合していない症例)
・重症骨粗鬆症で手術が必要な場合
を提案していました。
内服薬との違い
先生のMRIによる検討では、単発の新規圧迫骨折の後に
・週1回や月1回内服するビスフォスフォネート製剤(リカルボン、ボノテオ、ボナロン、フォサマックなど)の内服をした
・テリパラチドを投与した
この2つの場合では、骨折の治癒に差はなかったとのことです。
しかし、2個以上骨折している人では、テリパラチドはミノドロン酸内服に比べて、骨癒合促進する効果があるのではないかとのことでした。
また、新規の脊椎圧迫骨折はMRIでT1low stir highとして写りますが、
MRIのスクリーニングでは86例中20例は
1箇所の骨折に留まらず多発骨折であったとのことです。
骨粗鬆症による骨折は連鎖する上に、同時に多発することも多いということですね。
骨密度と薬の関係性
新規骨折の発生を防ぐ
ビスフォスフォネート製剤を飲んでもらっていても、骨折後の経過観察中にも新規骨折は発生します。内服してから半年以降に骨折抑制効果が出始めるためです。
3ヶ月しても痛みが治らない人では、新しい骨折があるかもしれないとのことでした。
フォルテオ投与後、ラロキシフェン(エビスタ)を内服すると、骨密度の低下を最小限に抑えられるとのことでした。また、大腿骨近位部の骨密度を増やしていました。
同様に、ビスフォスフォネート製剤への切り替えでは、さらに骨密度が増えて行くとのことです。
状況に合わせた治療戦略
重症骨粗鬆症の患者さんでは
・フォルテオ使用後にまだ骨密度が十分でない人は、ビスフォスフォネート製剤に切り替え
・十分に骨密度が上がった人では、ラロキシフェンで骨密度維持
それが治療戦略としては良さそうですね。
3年以上ビスフォスフォネートを飲んでいた人を、エディロール内服に切り替えた場合には、骨形成マーカーが上がり、破骨マーカーは下がったままになったそうです。
しかしビスフォスフォネートをただ中断すれば、また骨は弱くなって行きます。
同じ内服を漫然と続けるのではなく、その時々の状況に合わせて切り替えしながらも治療を継続することが大切ということですね。
骨粗鬆症による骨折を未然に防ぐには
その後の交流会では、金谷先生と「なぜ日本の牛乳にはアメリカのようにビタミンDを添加しないのか」ということで盛り上がりました。
医学と疫学と日用品が結びついて骨粗鬆症による骨折を予防しているアメリカと、いまだに骨粗鬆症による骨折が増え続けている日本。
骨粗鬆症を放っておけば次第に骨がもろくなり、骨折は連鎖します。
早く自分の骨粗鬆症に気づいて、早く適切なお薬を使用することで、将来の骨折を未然に防ぎたいものです。