
関節リウマチの治療を続けている中で、「血液検査では異常なしと言われたのに痛みが残っている」「医師からはリウマチは落ち着いていると言われたけれど、自分ではつらさがある」と感じる方は少なくありません。
関節リウマチでは、採血や触診、画像検査などをもとに病気の状態を評価します。
しかし、検査結果や医師の評価と、患者さん自身が感じている症状には、ずれが生じることがあります。
この記事では、2021年3月28日に開催された「第4回 日本関節エコー研究会のwebセミナー」に参加した際の内容を通して、関節リウマチで検査に異常がないと言われても痛みが残る理由と、関節エコー検査の重要性について、当院の考え方をもとに解説します。
検査では異常なしでも、自覚症状が残ることがある
様々なお薬を駆使して、医師による触診や採血では異常がなく、レントゲンでも進行が見られなくなって「寛解(かんかい)」とされることがあります。
寛解とは、病気の勢いが落ち着いている状態のことを指しますが、患者さん側には次のような自覚症状が残ることがあります。
・関節の動きが悪くなってしまった
では、患者さんの感覚と医師の評価のずれは、どのようなところで生じるのでしょうか。
患者さんの自覚症状と医師の評価にずれが生じる主な原因
1. 採血結果だけでは判断しきれないことがある
CRP(C反応性タンパク)は体の中の炎症反応を表す採血データですが、強い炎症がないと陽性にならないため、超早期や寛解に近いリウマチについては、CRPだけで関節炎の有無を判断しきれない場合があります。
CRPが陰性でも、関節滑膜炎の活動性が残っているリウマチはあります。
2. 手指・足趾の全関節を十分に触診していない
関節リウマチでは、手の指だけでなく、足の指にも炎症が起こることがあります。
しかし、リウマチ専門医でも足を触っていない先生もいらっしゃるので、触りなれないと見逃してしまいます。
特に、母趾(足の親指)、5趾(足の小指)の側面や、足底の所見については触っておく必要があります。
3. 触診はしていても、超音波検査を行っていない
触診ではわかりにくい滑膜炎もあるため、押さえて痛い関節や腫れている関節は、一度関節の超音波検査(エコー検査)を行っておくとよいでしょう。
触診と超音波でのドップラー所見※は食い違うことがよくあります。
特にとても全身のリウマチの活動性が強いときよりも、発症の超早期や寛解に近い時期など、活動性が低い時こそ、超音波で確認する価値が高まります。
また、足の指の関節では触診の精度が落ちますし、患者さん自身の痛み感覚も手よりも鈍いです。そのため、超音波を行っておくことで活動性滑膜炎(かつまくえん)の診断の手がかりとなることがあります。
超音波検査で、関節の中の血流を確認する所見です。
炎症がある場所では血流が増えることがあり、その反応を見ることで、炎症の活動性を判断する手がかりになります。
4. 超音波では完全に関節滑膜炎は沈静化していても、リウマチ以外の症状が残っている

超音波でも関節滑膜炎は完全に沈静化していますが、リウマチ以外の痛みを伴っている場合です。
これは、すでにリウマチで関節の軟骨や骨が壊されてしまっている痛みのほか、リウマチではない人でも普通に起こすことのある整形外科的な痛みのことがよくあります。
整形外科的な痛みについては、やはりリウマチ内科の先生よりも、整形外科医師や理学療法士が得意とするところです。
以前横浜のリウマチ内科医の先生とディスカッションした際にも、リウマチが超音波を用いて寛解している場合に患者さんの痛みが残っていれば、整形外科医と連携してリハビリや治療を行っているといわれていました。
現在通院中の先生がリウマチ内科の先生であれば、超音波を行ってもらい、活動性滑膜炎がないのであれば理学療法士さんのいる整形外科を受診するとよいでしょう。
5. レントゲンやMRIではわからない体の痛み
さらに、MPS(Myofascial Pain Syndrome:筋膜性疼痛症候群)を理解している先生に受診すると、レントゲンやMRIではわからない体の痛みを理解してくれると思います。
筋膜性疼痛は、筋肉の使い過ぎや慢性疲労により筋肉が硬くなったり、神経の動きが悪くなったりすることにより起こってくる痛みです。
僕も第3回日本関節エコー研究会で講演させていただきましたが、リウマチ患者さんにおけるMPS治療は、以下のような4つのステップが必要です。
MPS治療に必要なポイント
・関節エコーで活動性滑膜炎ではないことの確認
・教科書的な整形外科疾患ではないことの確認
・MPS診療を行うことのできる知識
・触診、診察技術、エコーガイド下に正確に注射(ハイドロリリース)することのできる技術
※適応や効果には個人差があります
MPSは、リウマチ患者さんの実感する症状と、医師の評価のずれの大きな要因となっていると考えられます。
リウマチを関節エコーも用いて早期に診断し、十分な薬物治療を行って寛解に持ち込み、残った症状については整形外科的、理学療法的に解決できるように目指す。
特に、リウマチで関節が壊れる前に十分な治療ができれば、自分が関節リウマチであることを忘れられる状態(患者さんの考える真の寛解)に至ることも稀ではありません。
なぜ今、この「ずれ」が注目されているのか?
そもそも、なぜこれほどまでに医師の評価と患者さんの実感の「ずれ」が議論されるようになったのでしょうか。
それは、患者さん自身が実感する症状「PRO(患者報告アウトカム:Patient Reported Outcome)」が重視されるようになり、リウマチ治療のゴールはどんどん高いレベルにひきあがってきたからだと言えます。
関節破壊を抑える「生物学的製剤」の登場
生物学的製剤が登場するまでは、関節リウマチと診断されれば、多くの患者さんで関節が壊れていくのを待つだけであった時代もありました。
そのため、関節破壊を抑え、寛解を目指すことのできる生物学的製剤の登場は「パラダイムシフト」と言えます。
そして医師は、何とか関節が壊れていく未来を食い止めようと、次々に発売される薬剤を駆使してリウマチと戦ってきたのです。
そのため現在では、薬物治療の目覚ましい進歩により、お薬をちゃんと使っていれば、関節の痛みや腫れも落ち着き、将来関節が壊れてしまわないように寛解~低疾患活動性を維持することが現実的なゴール(目標)となりました。
JAK阻害薬の登場による症状改善への期待
その背景には、関節リウマチ治療における次のような進歩があります。
関節リウマチ治療の進歩
・レミケードに始まる生物学的製剤の登場
・日本におけるMTXの投与上限の引き上げ
・近年のJAK阻害薬の登場
特に「JAK(ジャック)阻害薬」では、患者さん自身が実感する症状(PRO)を改善する効果が期待されています。
関節リウマチ治療の進歩により早期治療が重要視されるように
いうまでもなく、太古の昔から患者さんの訴えがあって、それを改善・治癒に導くために医療が提供されてきました。
このように、目標を定めて寛解や低疾患活動性を目指す治療方針は、Treat to Targetと呼ばれています。薬物治療の進歩とともに、早期診断が重要視されるようになりました。
では、寛解~低疾患活動性を達成できれば、リウマチは治った!と言えるのかといえば、患者さんの感覚と医師の評価のずれが指摘されるようになったという背景があります。
リウマチの悩みは専門医へご相談ください
血液検査で異常がないと言われても、痛みやだるさが残る場合には、関節の炎症が残っているのか、リウマチ以外の痛みが関係しているのかを丁寧に見極めることが大切です。
現在ご自身のリウマチ症状に悩まれている方は、全身の関節所見や筋肉の所見を正しくとってもらうこと、関節超音波を行ってもらうこと、必要に応じてリハビリやハイドロリリースを行うこと、を考えてみてくださいね。
痛みやリウマチのご相談は、さいとう整形外科リウマチ科へ

さいとう整形外科リウマチ科では、リウマチ専門医による関節リウマチの診療に加え、必要に応じて関節エコー検査やリハビリの視点も取り入れながら、患者さん一人ひとりの症状に向き合っています。
「検査では異常なしと言われたけれど、痛みが続いている」「今の症状がリウマチによるものか不安」という方は、お気軽にご相談ください。

