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骨の強さの30%を規定する、骨質とは、、、?

骨の強さの30%を規定する、骨質とは、、、?

昨日はファイザー主催の運動器フォーラム2012in Aichi
に参加してきました。

1.痛みに対する最近の薬物治療におけるコツ

2.高い骨密度でなぜ骨折するのか?
という2演題。

講演2では、東京慈恵医科大学整形外科の斎藤充先生が
骨質の謎について、ご自身の打ち込んできた研究結果をもとに
深く切り込んでお話しされていました。

久々に唸らせられるような講演を拝聴したので、
ご紹介いたします。

そもそも骨の強さってなんでしょう。
現在は骨強度の70%を骨密度が、30%を骨質が規定しているといわれています。
骨密度は骨密度測定器で測定することができますが、
骨密度が高くても骨折する人もいます。

その場合には骨の質が問われます。

子供の時には柔らかくてしなやかな骨。
それが、老化してくると同じ骨密度でもしなやかさが失われ
もろくなってきます。

骨の体積の半分はカルシウムなどのミネラル
半分はコラーゲン線維が占めますが

斎藤充先生のご研究ではそのコラーゲン線維同士を結びつける
コラーゲン架橋の質が悪くなり
悪玉コラーゲン架橋が増えることで骨がもろくなるとのことです。

悪玉コラーゲン架橋が増える原因には
老化、糖尿病、腎障害など、血管の動脈硬化とおなじ要因が関係しており
その本態は終末糖化産物 Advanced glycation end products(AGEs)と呼ばれます。
イメージとしては、建物を支える鉄骨に錆びがたまって劣化する感じです。

事実、糖尿病の方では、骨密度は平均より高い人でも
骨折のリスクは高くなっています。

女性では閉経とともに、骨粗鬆症だけでなく、
心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。

それは、女性ホルモンであるエストロゲンが低下することによって
骨が吸収されるバランスに傾くだけでなく、
酸化ストレスの増大や、血中ホモシステインも増加し
動脈硬化も進むからです。
その時同様に、悪玉コラーゲン架橋も増えるというのです。

斎藤充先生は
骨の弱い患者さんには
骨密度低下型
骨質劣化型
骨密度低下+骨質劣化型
の3つのパターンがあるといいます。

現在骨粗鬆症の内服薬として主流となっている
週1回や月1回、起床時に内服するビスフォスフォネート製剤ですが、
これは骨破壊を抑制し、骨代謝回転を緩やかにして
骨密度を増加させます。
しかし、骨の錆びを取り除き、骨質を高める効果はありません。

その際には、SERMという骨質を高める女性ホルモン類似のお薬が有効です。

また、ビタミンKや活性型ビタミンDも骨質を高める効果が認められます。

さらには、背骨や大腿骨、手首、肩など
骨がもろくなることで起こりやすくなる骨折(脆弱性骨折と呼ばれます)
をすでに起こした方や
骨密度の低下の著しい、重度の骨粗鬆症の患者さんでは
骨密度、骨質ともに増加作用のある注射製剤(PTH製剤 テリパラチド)を用います。

当院でも、開業後1年で40人を超える患者さんが
自己注射製剤で骨粗鬆症を治療されています。

脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす、
動脈硬化の原因となる高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満は
メタボリックシンドロームとして有名ですが、
これが悪玉コラーゲン架橋を増やして骨質を低下させ
骨粗鬆症を引き起こすなんて。

毎日の生活と健康管理が、いっそう大切に思えますね。

PROFILE

さいとう整形外科リウマチ科 院長 斉藤究

日本整形外科学会専門医日本リウマチ学会専門医日本整形外科超音波学会会員

「骨の強さの30%を規定する、骨質とは、、、?」への2件のフィードバック

  1. 難しいですね。
    単純な私は、骨密度が高いのは
    母のお陰かな?と感謝、感謝です。
    骨質と歯は関連が有るのでしょうか?

  2. tibisyukeさん

    確かに、母親が骨折をしている場合、娘さんの骨折するリスクは高くなります。
    骨密度が高いのは、お母さんからのプレゼントかもしれませんね^^

    骨質と歯についての関連はわかりませんが、歯牙の形成は赤ちゃんの頃から始まるので
    お母さんの影響は多分に受けるでしょうね。

    ちなみに、骨に関しては思春期にしっかりとカルシウムをとって、
    しっかりと運動することが将来的にもとても大切です。
    それが、peak bone massを引き上げます。

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