院長ブログ

リウマチの診断は採血だけではわかりません。

今日は東京にリウマチ治療薬オルミエントの勉強会に来ています。

以前からそうですが、これだけ様々なリウマチ治療薬が発達した今でも後をたたないのが、ちゃんとリウマチの診断ができていないのに、安易にリウマチ治療薬やステロイドを処方する医師が多すぎることです。

リウマチには高齢者に起こりやすい筋肉のリウマチであるリウマチ性多発筋痛症と、子供から高齢者まで発症し得る関節のリウマチがあります。

いずれも全身の筋肉や関節をちゃんと触診して、採血とレントゲンを見て、できるだけ関節にエコーを当てて超音波による関節の炎症(関節滑膜炎や腱炎、付着部炎といいます。)を診断根拠にします。

決して全身の関節をろくに触らず、エコーも当てず、採血でリウマチ因子が陽性だから、とか、CRPや血沈という炎症の値が高いから、というだけで関節リウマチの診断をしてはいけないのです。

健康診断でリウマチ因子が陽性なだけで、病気を発症していない人は山ほどいます。その人に関節リウマチの薬を飲ませる必要はないのです。

ところが現実は、指が痛い?では採血しましょう。リウマチ因子が25と少し上昇しており陽性ですね。関節リウマチのお薬飲みましょう。関節リウマチの薬と炎症を抑えるステロイドも出しておきますね。

なんていうことがよくあります。

ステロイドが入ってしまうと、体のあらゆる炎症を抑えてしまうため、何の病気だかわからなくなってしまいます。(ただし、リウマチ性多発筋痛症の診断がついたら10〜20mgのステロイドをスパッ!と使うことも必要です。)

また、診断根拠が乏しいのにリウマチの薬を飲んでしまえば、僕のところに初診していただいてもその場で確定診断に至ることは難しくなってしまい、まずは薬を中止してもらい、体から薬を抜くところから始めなくてはならなくなってしまいます。

絶対に採血だけを見て、リウマチの診断をしてはいけないのです。

リウマチ因子が陽性でも、関節痛や関節腫脹といった症状の鑑別診断は関節リウマチだけではありません。

それどころか、リウマチ因子が陰性でも関節リウマチの診断をしなくてはいけない時もあれば、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患などに伴う関節炎や、SLEやシェーグレン症候群などの関節炎を起こす病気群、もっと多いのは更年期障害、ヘバーデン結節、腱鞘炎、筋膜性疼痛なども鑑別する必要があります。

リウマチ因子が陽性だからリウマチですね、とは、絶対に言ってはいけないのです。そういういい加減な診断をする医師が多すぎます。

そこをリウマチ医として、そして整形外科医として、幅広い鑑別診断の中から全身の関節を足まで全部触診し、関節エコーを当て、触診では見逃してしまうような滑膜炎まで見つけて診断をつける。

リウマチではないとしたらなぜ関節が痛いのか別の鑑別を行う。

痛みの原因を幅広い鑑別診断と触診の技術、エコーの力を借りて確実に診断することが必要なんです。

関節が痛くてリウマチが心配だな、という方は、今かかっている先生が信頼できるかどうかは、

・全身の関節をちゃんと触る

・レントゲンだけではなくエコーを当ててくれる

・リウマトレックス/メトトレキサートは4mg以下の少ない量ではなく、8mgから16mgまで関節の炎症がちゃんと無くなるまで寛解を目指した治療をしてくれている。

・無闇にステロイドを使わない

・寛解しなければ速やかに別の種類の内服薬や注射薬生物学的製剤を提案してくれる

・患者さんと一緒にリウマチで関節が壊れないための未来を見ながら治療を提案してくれる

・リウマチでないとしたら、なぜ痛いのかちゃんと鑑別してアドバイスや治療をしてくれる

という点が大切なポイントなので、当てはまらない点があれば他のリウマチ専門の先生の意見を聞いてみると良いでしょう。

ちなみに統計データによると、エコーを当ててもらったことのある患者さんはリウマチ患者さんの2割しかいないというデータもあります。

これだけリウマチの治療薬が進んだ今だからこそ、医師がちゃんと早期診断と、寛解に導く十分な治療ができるかどうか、その腕が問われています。

もしちゃんとリウマチの診断や関節エコーを学びたいという医師の方がいましたら、関節エコー初心者のためのセミナーも行っていますので、abbvieの担当者さんまでお申し付けください。

年に2回、全身の関節のエコー描出を学ぶためのMIRAIの会というのを名古屋で行っています。

日本医事新報社さんからデジタル書籍も出版しておりますので、参考にしていただければと思います。

https://jmedj.net/items/5e17d5b9d790db32f6df2d1d

ぜひ多くの医師に参加していただき、正しくリウマチ性疾患を鑑別できる医師が増えて欲しいと思っています。

 

さいとう整形外科リウマチ科

院長 斉藤究

465-0097

愛知県名古屋市名東区平和が丘1-10

http://saito-seikei.jp

 

2023.08.06 | コメント(0)

リウマチ勉強会で東京です。

今日は仕事が終わった後、東京に来ています。

リウマチの生物学的製剤シンポニーのお勉強会です。

講演内容の要点を箇条書きにしますね。

リウマチの患者さんや、リウマチ患者さんを診療している先生のお役に立てますように。

明日は痛みのお勉強です。これも東京。

 

 

 

TNF阻害薬によりもたらされたRA治療の変遷

レミケード休薬 RRR試験 2010
平均罹病期間5.9年の患者さんでも
深い寛解DEEP REMISSIONになれれば、レミケード休薬も可能。
HOPEFUL3
ヒュミラの休薬試験
RA BEAM試験
ヒュミラはJAK阻害薬オルミエントと同等以上の骨破壊抑制効果
RANKLに依存せず、TNFαとIL6により誘導される破骨細胞がある。
2013 TNF阻害薬を使用すると重症心血管障害MACEが減る。
2018 ANOUBEAU試験
ヒュミラを使うことで仕事ができるようになり労働生産性が上がる。
2015 PARA試験
妊娠前の疾患活動性が高いと妊娠しづらい。
早産のリスクにもなる。
レミケードは胎盤透過性があるので妊娠末期は中止すること。出産後の子供の免疫力が低下する。
2017 RF 抗CCP抗体が高力価であればTNFαも高いと推測される
ACPA-ICはRFが高力価で存在するほど、マクロファージからのTNFαを強く誘導する
2019 抗核抗体上昇は、生物学的製剤の効果不十分と関連する。
特にレミケードで抗核抗体が誘導されやすい。
CRPが1.5以上や、高疾患活動性の患者さんでは、シンポニーは100mgが望ましい。
2018 生物学的製剤をつかってもリウマチの分子寛解molecular remissionは達成できていない。
リウマチ患者さんは増えている。
治療が良くなったことで長生きになっている。
D2T RAとは、
2剤以上の生物学的製剤やJAK阻害薬でもLDA寛解できない。
ステロイドの減量が困難
年間にかかる医療コストが高額になる。
KURAMAコホート 2021
RF高値や肺疾患があるとD2T  RAになりやすい
65歳以上はHAQ改善が難しい
→QOLが落ちる前に早期診断、早期に寛解を目指した治療が必要。
D2T RAを疑えば、
まず診断がリウマチで正しいのか見直す。
エコーを使って活動性滑膜炎なのか評価する
活動性滑膜炎がないのに無闇に薬を変え続けないように。
変形性関節症によるものであれば手術も検討。
D2T RAを生まないためには
早期診断、早期治療、T2T
有効性を見極め、安易な薬剤変更を行わない。
ステロイドに依存しない治療
合併症のマネジメント
患者さんの服薬指導
寛解後に生物学的製剤からやめるか、MTXから辞めるかの薬剤taperingについては、アメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会では逆の推奨。

2023.07.29 | コメント(0)

本日5/6土曜日は休診です。

ゴールデンウィーク

みなさんいかがお過ごしでしょうか。

 

12年間ずっと走り続けてきた さいとう整形ですが、

今年のゴールデンウィークは5/6土曜日の1日臨時休診とさせていただきました。

院長、スタッフしっかりお休みをとり、

また皆さんに元気な波動を伝えられるように

英気を養ってまいります。

診察は5/8月曜日から通常通り行います。

 

皆さんも良いお休みをお過ごしください。

 

さいとう整形外科リウマチ科

院長 斉藤究

 

2023.05.06 | コメント(0)