早期リウマチとは?治療のチャンスを逃さない!
7月11日(日)
今朝の『松本裕子の病を知る』という番組で、
「早期リウマチとは?治療のチャンスを逃さない!」というテーマが放送されたようです。
解説は北大名誉教授で、北海道内科リウマチ科病院 最高顧問の小池隆夫先生。
北海道内科リウマチ科病院は、開業前に僕もリウマチ超音波診断の技術を初めて見学させていただいた病院です。
小池先生はそのリウマチ超音波診断を日本に広めた功績のある先生で、先生が代表となるAOI Academy of imagingという勉強会では、多くのリウマチ医や検査技師達が、リウマチ超音波の技術を学び、今は日本中で活躍しています。
とはいえ、まだまだ皆さんの近くにリウマチ超音波をやってくれる先生がいるかと言うと、現状では足りません。
リウマチはまず手足の全ての関節を触診して、圧痛や腫脹のある関節を見抜き、さらに超音波を当てることで、その関節にリウマチの滑膜増殖があるか、今まさに炎症が起こっているかが目で見てわかるようになります。
さらには、リウマチと診断されて治療薬を内服してからも、関節からリウマチの炎症がちゃんと消えているかを、超音波では確認することができるので、触診を超えた深い寛解である超音波寛解を確認することができます。
超音波寛解していれば、まずその関節の骨が溶けていく心配はありません。
関節リウマチは、超音波を用いてできるだけ早期に正しく診断して、早期に治療を始めることができれば、関節の破壊を防ぐことができます。
番組で「治療のチャンスの窓」として紹介されていたWindows of opportunityは、リウマチは発症して早期の時期に1番進行が早いため、関節が炎症で溶けてしまう前にしっかりと治療しましょう、という意味のスローガンです。
もしリウマチが心配だ、と言う方や、今リウマチを治療しているけど、自分はちゃんと寛解まで達成しているのかどうか心配な方は、一度ご相談くださいね。
ただ、全ての患者さんに超音波診断が必要なわけではないので、まずは今の状態が超音波診断まで進むべき、リウマチが疑われる状態かどうかから診察します。
さいとう整形外科リウマチ科
院長 斉藤究
名古屋市名東区平和が丘1-10
052-776-3110
2021.07.11 | コメント(0)
私はコロナワクチンを接種してもいいですか?
現在患者さんから頻繁にお問い合わせをいただいております。
「私はコロナワクチンを打っても良いですか?」というご質問です。
特に多いのが、血をサラサラにするお薬(抗凝固薬)を内服していますか?という問診事項についてのお問い合わせです。
新型コロナワクチンの予診票・説明書・情報提供資材|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
これはコロナワクチンと相互反応を起こすというよりも、注射部位からの出血が止まらないといけないから、という配慮だと思われます。
当院で使用している薬の解説をします。
●オパルモン(ジェネリックではリマプロストアルファデクス)
脊柱管狭窄症の薬です。脊髄の馬尾神経の血流を促進する薬ですが、出血部位からの止血が悪くなるような効果はありません。コロナワクチンの接種は問題ありません。
●エパデール(ジェネリックではイコサペント、メルブラ―ル)
脂質異常症や毛細血管血流の改善のための薬です。魚の油から作られている薬で、オメガ3という体に良い油です。サプリメントではDHAやEPAと同様の効果があります。この薬単体では出血部位からの血液が止まらなくなるような抗凝固効果はありませんが、その他の種類の抗凝固薬を内服していると、出血傾向が助長されることがあります。エパデールのほかに抗凝固薬を飲んでいない場合にはコロナワクチンの接種に問題はありません。その他の抗凝固薬を内服されている方は、処方いただいている主治医の先生にご相談ください。
基本的にその他の抗凝固薬を内服している方でも、採血は普通にされるわけですから、コロナワクチン接種後もしっかりと注射部位を5分間ほど圧迫止血すれば通常は問題ありません。
リウマチの患者さんにおいては、日本リウマチ学会、アメリカリウマチ学会など各学会が新型コロナワクチンの接種を推奨しています。
新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンについて(患者様向け情報) | 一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR) (ryumachi-jp.com)
COVID-19-Vaccine-Clinical-Guidance-Rheumatic-Diseases-Summary.pdf (rheumatology.org)
以下日本リウマチ学会HPより引用させていただきます。
日本リウマチ学会としては新型インフルエンザワクチンと同様にステロイドをプレドニゾロン換算で5mg/日以上または免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤のいずれかを使用中の患者は他の人たちよりも優先して接種した方がよいとしています。」
「接種するならば疾患活動性が安定してからが望ましいと考えます。」
「現時点でステロイドや免疫抑制剤がこのワクチンにあたえる影響はわかっていません。通常のワクチン接種の場合、免疫抑制剤やステロイドを中止・減量することはありません。よって基本的には接種前後で免疫抑制剤やステロイドは変更せず継続すべきと考えます。」
「ワクチンを接種するかどうかは、接種のリスクと感染のリスクを比較して決めることになります。」
ワクチンを接種すること | |
利点 | 重症化しにくくなる、もしくはしなくなる効果が認められていること 現在までに知られている変異にはすべて対応していること 弱毒生ワクチン(現在開発中)と違いすべての患者で投与が可能であること |
欠点 | ワクチンの種類が今までにないものであること アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応や局所の強い反応が認められている 今後のウイルスの変異に対応できるかどうかがわからないこと |
「新型コロナウイルス感染後、重症化しやすいリスクとしては高齢者、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満があげられます。年齢については30歳代と比較した場合の60歳代の重症化率は25倍になると報告されています。」
また、上記米国リウマチ学会(ACR)のガイダンスでは、
MTX、JAK阻害薬はワクチン投与後1週間休薬をすることについて、エキスパートコンセンサスの強さは中等度となっています。
また、オレンシアはワクチン投与1週間前から投与1週間後まで休薬することについて、エキスパートコンセンサスは中等度となっています。
日本リウマチ学会では特に使用中の薬剤の休薬については言及されていません。
そのため、当院に通院する患者さんには特にいつも通り治療を継続しながらワクチン投与をおこなってもよい旨お伝えしていますが、上記ACRの言及が気になるようであれば休薬されてもよいかと思います。ただし、ACRガイダンスの冒頭にも十分に信頼できるデータはまだ乏しいため、臨床的な判断を重視するように記載されています。
今回の新型コロナワクチンは通常のワクチンや薬剤のように日本人での十分な治験プロセスを経て接種開始されたものではないため、一定の未知のリスクがあることは否定できません。
日本人で投与され始めたのも最近のことであり、2回目の投与翌日には発熱や倦怠感が強くでる場合があることもネット上で体験談が上がってきています。そのため、2回目投与の翌日にはカロナール(アセトアミノフェン)を飲んでおくと少しは楽になるようです。
何より、長期的な副作用はまだわからないところがあるため、ご自身の新型コロナウイルス感染リスクがワクチン接種リスクを上回るほど高いと感じる方はワクチンの接種をしてもよいでしょう。
2021.04.26 | コメント(0)
関節リウマチと関節エコー検査
今日は第4回日本関節エコー研究会のwebセミナーに参加しました。
JAK阻害薬が出現して、現在5剤が使用可能となっていますが、このJAK阻害薬は患者さんのPRO(Patient Reported Outcome)を改善する効果も高いとキャンペーンされています。
PROとは、要するに患者さん自身が感じている症状のことです。
いうまでもなく、太古の昔から患者さんの訴えがあって、それを改善・治癒に導くために医療が提供されてきました。
今更何をPROか、という感じもしますが、関節リウマチ治療においてはレミケードに始まる生物学的製剤の登場、日本におけるMTXの投与上限の引き上げ、そして近年のJAK阻害薬の登場と、薬物治療の目覚ましい進歩によりお薬をちゃんと使っていれば、関節の痛みや腫れも落ち着き、将来関節が壊れてしまわないように寛解~低疾患滑動性を維持することは現実的なゴールとなりました。
この現実的なゴール:寛解~低疾患滑動性を目指そう、という動きは、Treat to Targetと言われ、薬物治療の進歩とともに、早期診断が重要視されるようになりました。
生物学的製剤が登場するまでは関節リウマチと診断されれば多くの患者さんで関節が壊れていくのを待つだけであったことを考えると、関節破壊をストップし、寛解を目指すことのできる生物学的製剤の登場はパラダイムシフトと呼ばれました。そして医師は、何とか関節が壊れていく未来を食い止めようと、次々に発売される薬剤を駆使してリウマチと戦ってきたのです。
では、寛解~低疾患滑動性を達成できれば、リウマチは治った!と言えるのかといえば、患者さんの感覚と医師の評価のずれが指摘されるようになりました。
様々なお薬を駆使して医師による触診や採血では異常がなく、レントゲンでも進行が見られなくなって「寛解」とされていても、患者さんは、
・医師には関節の腫れは消えたといわれたが、まだ痛みが残っている。
・なかなかリウマチになる前のようには働けない。
・痛みは消えたが、だるさがつらい。
・関節の動きが悪くなってしまった
など、様々な自覚症状が残っていたりします。
ここで、PROが重要視されるようになってきた経緯があります。
リウマチ治療のゴールはどんどん高いレベルにひきあがってきたのです。
では、その患者さんの感覚と医師の評価のずれはどのようなところで生じるかと言えば、
1. 医師が採血結果に依存しすぎている
2. そもそも手指・足趾の全関節を触診していない。触診技術が未熟。
3. 触診はしていても、超音波検査を行っていない。
4. 超音波でも完全に関節滑膜炎は沈静化していても、リウマチ以外の症状が残っている。
1については、CRPは炎症反応を表していますが、リウマチについては非常に鈍感な検査です。強い炎症がないと陽性にならないため、CRPが陰性でも関節滑膜炎の活動性が残っているリウマチはたくさんあります。
2については、リウマチ専門医でも足を触っていない先生もいらっしゃるので、触りなれないと見逃してしまいます。特に、母趾、5趾(足の小指)の側面や、足底の所見については必ず触っておく必要があります。
3については、医師の触診技術の未熟さだけでなく、触診ではわかりにくい滑膜炎もあるため、押さえて痛い関節や腫れている関節は一度関節超音波検査を行っておくとよいでしょう。触診と超音波でのドップラー所見は食い違うことがよくあります。特にとても全身のリウマチの活動性が強いときよりも、発症の超早期や寛解に近い時期など、活動性が低い時こそ、超音波で確認する価値が高まります。また、足趾関節では触診の精度が落ちますし、患者さん自身の痛み感覚も手よりも鈍いため、超音波を行わないと活動性滑膜炎が見逃されがちです。
4については、超音波でも関節滑膜炎は完全に沈静化していますが、リウマチ以外の痛みを伴っている場合です。これは、すでにリウマチで関節の軟骨や骨が壊されてしまっている痛みのほか、リウマチではない人でも普通に起こすことのある整形外科的な痛みのことがよくあります。
整形外科的な痛みについては、やはりリウマチ内科の先生よりも、整形外科医師や理学療法士が得意とするところです。
先日横浜のリウマチ内科医の先生とディスカッションした際にも、リウマチが超音波寛解している場合に患者さんの痛みが残っていれば、整形外科医と連携してリハビリや治療を行っているといわれていました。現在通院中の先生がリウマチ内科の先生であれば、超音波を行ってもらい、活動性滑膜炎がないのであれば理学療法士さんのいる整形外科を受診するとよいでしょう。
さらに、MPS(Myofascial Pain Syndrome:筋膜性疼痛症候群)を理解している先生に受診すると、レントゲンやMRIではわからない体の痛みを理解してくれると思います。
筋膜性疼痛は、筋肉の使い過ぎや慢性疲労により筋肉が硬くなったり、神経の動きが悪くなったりすることにより起こってくる痛みです。
僕も第3回日本関節エコー研究会で講演させていただきましたが、リウマチ患者さんにおけるMPS治療は、まずは関節エコーで活動性滑膜炎ではないことの確認。そして、教科書的な整形外科疾患ではないことの確認。最後に、MPS診療を行うことのできる知識と触診・診察技術・エコーガイド下に正確に注射(ハイドロリリース)することのできる技術が必要です。
MPSは、リウマチ患者さんのPROと医師の評価のずれの大きな要因となっていると考えられます。
リウマチを関節エコーも用いて早期に診断し、十分な薬物治療を行って寛解に持ち込み、残った症状については整形外科的、理学療法的に解決する。特に、リウマチで関節が壊れる前に十分な治療ができれば、自分が関節リウマチであることを忘れられる状態:患者さんの考える真の寛解に至ることも稀ではありません。
現在ご自身のリウマチ症状に悩まれている方は、全身の関節所見や筋肉の所見を正しくとってもらうこと、関節超音波を行ってもらうこと、必要に応じてリハビリやハイドロリリースを行うこと、を考えてみてくださいね。
さいとう整形外科リウマチ科
院長 斉藤 究
愛知県名古屋市名東区平和が丘1-10
TEL 052-776-3110
2021.03.28 | コメント(0)